一昔前、友達を空港に見送りに行った時の事。出会ったのは、その友達が帰国する直前で、見送りには他にもう二人来ていた。その三人はずっと仲が良くて、そのうちの一人の帰国。帰国する子にプレゼントを渡したり、というような時間が過ぎて、ついにその子が旅立った後、それまでは自然に振舞っていた一人が号泣して俺に言う。「この場に優作がいてよかった。いなかったら既に泣き崩れている」と。実に味わい深い見送りだった。
小説みたいな表現になるけれど、この三人には俺の知らないストーリーがあって、俺はそこに偶然迷い込んだ第三者のような気分になっていた。俺目線でストーリーは進んでいるけれど、実は他三人のストーリーがメインで、俺はその話の終盤に登場した脇役、みたいなイメージ。
この人たちには俺の知らない、語られていないストーリーがある。人それぞれにストーリーがあって、それぞれの話に俺たちは登場したり退場したりしながらそれぞれのストーリーを進めて行く。そんな風に考えるようになったのは、この時からのように思う。
きっと俺はこの瞬間も、自分のストーリーの主人公でありつつ、誰かのストーリーの脇役であり、重要人物でもあるんだと、そんな風に思う。