朝早く成田空港を発ち、乗り継ぎを経てクラビーに到着。シャトルバスでアオナンに辿り着いた初日に引き続き、クライミング紀行二日目の内容です。
旅二日目:1月31日(金)
まあまあ眠れましたが、寝ている間に蚊か何かに刺されて痒い。この時期(むしろブログを書いている現時点ではさらに)日本国内で感染が広まり始めていたコロナウイルスもさることながら、タイでは蚊から感染するデング熱も脅威。蚊には極力刺されないことに越したことはないので、この日の買い物リストに虫除けスプレーが加わりました。早朝のホステル周辺を軽く散策し、近くのcafe’ brunch by lala moonにて朝食を摂りました。
la la moonは清潔でおしゃれな感じではあったもののサンドイッチとカフェラテのセットが150タイバーツは少し高い印象です。一度ホステルに戻りまとめておいた荷物を持って8時に着くようKARST CLIMBINGに向かいます。
到着後、少ししたら前日挨拶した方が運転する車が到着し、長身のヨーロッパ系の男性も一人車から降りてきました。この日は自分とこの男性の二人がガイドを申し込んでいたようです。お互い挨拶を交わし、店舗内でそれぞれパスポート情報や緊急連絡先などを記入します。ヨーロッパ系の彼はドイツから来たCさん。年齢は俺より少し上くらいだろうか。
そしてどうやら前日挨拶しこの朝車で現れた男性がガイドの方で、名前はMon(モン)さんというらしい。ここでこの旅で一番長く時間を共有したモンさんの紹介を行っておきたいと思います。
店内でCさんの靴やらハーネスやらをそろえたら、全員で車に乗り込みAo Nam Maoのボート乗り場へ。アオナンではなくAo Nam Maoからボートに乗っていた理由は、概要でも書いたとおりおそらく駐車場があるからだと思います。
ボート乗り場に到着後、少し待ったらボードに乗船でき20分くらいでライレイ・イーストビーチに到着しました。ライレイ・イーストには桟橋があり、桟橋から歩いて5分もしないところにこの日向かったOne-Two-Three Wallというエリアがあります。日本語でプラナン、クライミング、といった検索ワードで調べるとウォームアップするエリアとしてよく紹介されているエリアです。
到着したら、さっそくハーネスを装着してクライミングの準備です。さて登るか…と思いきや、俺がモンさんをビレイするというビレイスタート。まずはモンさんがセットしたトップロープを俺が登り、エイトノット含め問題なくこなせるかの確認をしてからリードに移行するという方針だったようです。
問題なくビレイを終え、トップロープで一本登る。国外の外岩は人生初体験でした。タイのクライミングのグレードは、日本で使用されているデシマルシステムではなくフレンチグレードが採用されています。各国のグレードは単純比較が難しく比較表はいろんな人(出版社?)が用意しており、またタイで購入したトポにも載っていましたが個人的にはこの比較表が的確な気がしました。
とはいえ、6b+の5.11a以降は正確だと思いますが、6b以下はデシマルグレードでは1グレード以上の開きというか幅があるような気がします。6aを登ったとしても体感的には5.10aかそれ以下と感じることもありました。6a+からは難しい場所も出てくるルートが増えましたが6a以下はアップで登っても問題ないルートばかりでした。午前中登ったルートは以下のとおり。項目ごとに左から登った順番、ルート名、グレード(フレンチ)、結果、という内容で記しています:
One-Two-Three Wall
- King Cobra 5 TR
- Ling Noi 5 mOS
- Nuat Hin 6a+ mOS
※このルートのみ隣のMuay Thai Wallに属する
- Make A Way 6a+ 1テン
- Giggering For Climbing 5 mOS
午前中だけで6本、午後もあわせるとこの日は10本登りました。日本の外岩でもこんなに登ったことはありません。初日からくったくたになりました。
プラナンのクライミングの特徴としては
岩質:石灰岩。コルネを形成する特徴があり日本ではあまり見られない立体的な岩壁が多かった印象です。
長さ:25m程度の長いルートが多い。
終了点:例外なくすべてリング。ロープの結び替えが必要です。
特徴:様々な傾斜角の岩場が点在しており、3Dでダイナミックなものから細かいホールドを捕まえていくルートまで多種多様なルートが楽しめる。また、岩に打ち込まれているボルトはステンレス製ではなくチタン製のものが多く、ボルトにクリップする場合チタン製のみ使用するよう注意書きがトポに書かれています。チタン製のボルトというのは海水に強いステンレスであっても錆びてしまうというこの地域の特性に対応するために有志で知恵を絞って導き出した打開策で、プラナン地域の岩にチタン製のボルトを打ち込むための「タイタニアムプロジェクト」というプロジェクトが現在も行われています。※プロジェクト名はチタンを英語で言う場合のタイタニアム(Titanium)に国名をかけてThaitaniumと書きます。チタン製のボルト以外ではスリングがかけられている場合も多い。岩質的にもろい場所が多くまた穴が開いている箇所も多いので、可能であれば壁にボルトを打ち込むよりも穴にスリングを通すほうが安全でなおかつ手っ取り早いのだとか。スリングにクイックドローをかけるのは意外と難しく慣れるのに時間を要しました。
といったことが挙げられます。上に書いたとおり終了点がすべてリングなので毎回結び替えが必要で、これは相変わらず何回やっても変な汗をかく作業でした。今回の旅の間だけでこれまで日本で行なった回数以上に結び替えをした気がします。
トップロープでのクライミングは初回のみで、以降はすべてリードで登りました。3日間のグループセッションでの主な流れとしては
- アップ用のルートを俺がリードで登る
- 終了点で結び替えてクイックドローを回収しながら降りる
- これでトップロープがセットされグループのほかの面々がトップロープで登る
という流れでした。アップ用に俺が登ったルート以外のルートにモンさんがわざわざトップロープのセットを行うと時間を食うし、効率よくまわしていたと思います。ガイドの作業の一部を俺がやっていた感もなきにしもあらずでしたが。
さて、岩場の様子は文章よりも動画や画像で見ると分かりやすいので以下にいろいろと載せていきます。まずはこちら、初日にOne-Two-Three Wallで撮影した動画です。
多くの人たちで賑わっていますが、その殆どは初心者でガイドを伴って来ている人たちでした。ヨーロッパから来ている人が多かった印象です。立体的で25m以上ある高い壁が横一面に広がっており、後ろはエメラルドグリーンの海。暑いけど海風が気持ちいい。控えめに言ってもクライミングをやるには最高の環境です。
こちらは「Nuat Hin」登攀中にドイツ人Cさんが撮ってくれた写真。グレードは6a+で体感的には5.10a/bくらいでした。俺が立っている位置の穴ぼこを突破するのが意外と難しかった。上部の洞穴みたいになっている中に終了点があります。後日両隣にあるルートを登ることになり、特に右隣の「Muay Thai(6b+/5.11a)」は燃えました。
「Make A Way」登攀中の写真、同じくドイツ人Cさんが撮ってくれました。25mほどある長いルートで、あとは終了点までというところでワンテンしてしまいました。これも「Nuat Hin」と同じく6a+というグレードですが、難しめの5.10bという印象です。この日は再トライしませんでしたが後日再トライのうえ完登しました。
午前中のクライミング中にモンさんに本人の最高グレードを聞いてみたところ、謙遜してあまりはっきりしたことを言ってくれません。ベールに包まれたモンさんの実力でしたが、すぐ近くで俺とモンさんの会話を聞いていた他のガイドさんが「彼は8a+まで登ったよ」と耳打ちしてくれる。8a+って…5.13c!?とんでもない人にビレイしてもらっているんだなと思った瞬間でした。
さて、午前中のクライミングをきりのいいところでいったん切り上げ昼食です。ライレイビーチにはライレイ・イーストとライレイ・ウェストを結ぶ道沿いにレストランが軒を連ねており食事には困りません。モンさんは別行動だったのでドイツ人Cさんと二人でこの日は12:40から昼飯を摂りました。モンさんとは13:40待ち合わせにしましたが、レストランでアメリカ人カップルと仲良くなり盛り上がったので待ち合わせを14時に延期してもらいそのままレストランでしゃべり続ける。このカップルはトンサイエリアにいつまでいるか決めずにのんびりとクライミングしたりしながら過ごしているのだとか。羨ましい限りです。ドイツ人Cさんはというと、会社を休職して数ヶ月間アジア周辺を旅しており、なんと既にネパールでトレッキングしてきたのだとか。ネパールのトレッキングかタイでのクライミングか迷っていた俺に対して両方ともこなしている人も世の中には普通にいるようです。Cさんが行ったのは俺が行こうとしていたエベレスト街道ではなくランタン谷だったそうですが、見せてもらった写真はどれもTHEネパールのトレッキング!って感じで改めて行きたくなりました。…が、今は山歩きよりも岩登りに燃えているので次に海外に行く機会が訪れたとしても行くのはまたタイになる気がします。東南アジアについて俺よりもはるかに詳しいCさんに「マッサマンカレーが美味しい」と勧められこの日の晩ご飯で食べることになります。昼ご飯で食べた中ではパパイヤサラダが美味しかった。甘辛で疲れに効く気がします。
Cさんはこの日の午前中のみガイドを申し込んでいたのでレストランで解散しました。この滞在中もう一度会うことになりますがそれはまた後ほど。Cさんと別れ14時にモンさんと合流し、歩いてすぐのDiamond Caveという岩場へ移動しました。Diamond CaveはOne-Two-Three Wallとは異なり内陸にあり、日本の外岩のイメージに近い岩場でした。Diamond Caveで登ったルートは以下のとおり:
Diamond Cave
- No Name 5 mOS
- No Name 6a+ 1テン
- No Name 6a+ ×
ムーブを確認して途中で降りる
- No Name 6a+ RP
- Keep The Jam, Man 6a mOS
※3便の6a+は同じルート
※No Nameは単純に名前がつけられていないルートを指す
Cさんが去ったことで、「グループ」とはいえ俺一人。もはやプライベートガイドです。正直グループガイドでここまでの本数登れるとは思っていなかったので安価なグループガイドに申し込んで大正解でした。この日の後半戦で印象に残っているのは名無しの6a+。大苦戦したこのルートを3便目でRPしてトップロープ状態にして降りてきた後に撮った写真がこちら。
これも午前中に登った「Make A Way」同様、難しめの5.10bという印象です。3便もかかったのは午後で疲れていたからかもしれません。とにかくすごい本数登らせてくれるので、タイにいた間だけでもかなりのトレーニングになったように思います。この日は16:30まで登り、撤収。ロングテールボートの乗り場に向かいます。蛇足ですがプラナンには猿が多く、観光客が餌を与えてしまい人間を怖がらなくなってしまったので現地の人は困っているそうです。看板などで注意を促してはいましたが普通に餌を与えている観光客がいました。日本も野生の猿がいて似た問題があるので俺なんかは餌は与えないものだと最初から理解していますが、特にヨーロッパの人はあまりこの辺の事情を知らないのかもしれません。
一旦ホステルに戻りシャワーを浴びたりして過ごし、19時にヘルメットなどを返しにKARST CLIMBINGの店舗に行きました。このとき店舗にあったトポを見せていただき「いくらですか?」と聞いたところこの店舗では販売していないと言う。ライレイビーチで売っているということだったので翌朝購入することになりました。その後は再びホステルに戻りだらだらと過ごす。初日に10本も登ったので相当疲れていました。19:45くらいにようやくホステルを出て晩ご飯を食べに出かけました。この夜は前日入ったチープチープではなくRACHA SEAFOODという店に入り、昼にCさんからお勧めされたマッサマンカレーを食べてみました。
豆と芋がメインで、具材を牛肉かシーフードかチキンから選べます。ココナッツ風味で旨い。ただ、どの店でもマッサマンカレーは180タイバーツ(640円くらい)が相場なので他の料理に比べて少し高いです。同じ値段で炒飯が三杯くらい食べられます。夕食帰りにコンビニに立ち寄り虫除けスプレーを探しました。普通に売っているかと思いきやファミマには売っておらずセブンで発見。
ホステルに戻りのんびりと過ごし、0時過ぎに就寝。翌日も朝8時にKARST CLIMBINGの店舗前に集合です。
三日目に続く→
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