プラナン・クライミング紀行: DAY 3

クライミング三昧のクライミング紀行、二日目に引き続き三日目の記録です。10本登った前日からの連登なので結構身体がギシギシいっていたように記憶しています。

旅三日目: 2月1日(土)

前日と同じcafe’ brunch by lala moonにて朝食を摂り、朝8時にKARST CLIMBINGに到着。この日は俺以外に二人いるということでしたが、ライレイビーチで合流するらしく車に乗り込んだのは俺一人です。

これまた前日同様ライレイ・イーストに到着。他の二人というのはカップルのお客さんだったようで、彼女のほうはカナダ出身のEちゃん、彼氏のほうはアメリカ出身のBさん。岩場に向かう道中、ビーチ沿いにあるクライミングの店舗(ガイド?)にてトポを入手。1,000タイバーツ(3,600円くらい)と安くはないのですが、これがあるとないとで楽しめるかどうかが大きく変わってきます。

タイのトポ

トポを入手したら岩場へ。前日訪れた岩場ではなく、この日はPra-Nang Beachというエリアに向かいました。岩場に向かう道中にある鍾乳洞?岩?が形容しがたい複雑で立体的な形状をしていました。

鍾乳洞?

写真の左側に見えている柵の向こうには完全プライベートのとんでもない広さのホテル?邸宅?があり、一泊130,000タイバーツ(46万円くらい!)もするらしい。無理です。

さて、鍾乳洞を見ながら先に進んでいくとPra-Nang Beachが目に飛び込んできました。ここにはビーチ沿いでのんびりする人からクライミングする人までいろんな人がいました。

城ヶ崎っぽい
雰囲気は少し城ヶ崎みたいな感じでした。

プラナンビーチ
岩を背にすると目の前は海。遠方には島。

この時間帯(朝9時過ぎ)はあまり混んでおらず快適に過ごせましたが、このあとどんどん人が増えていきます。さて、さっそく登ります。前日同様、俺がリードで登り残りの面々がトップロープで登るという流れでした。Pra-Nang Beachで登ったのは以下の5本のルート。

Pra-Nang Beach

  1. Cave 5 mOS
  2. Em & Ems 5 mSO
  3. Monkey Maker 6a mOS
  4. Little Shit 6c ×
  5. Small Changeの変化版 5? mOS

簡単なルートも多いですがとにかく壁の形状が立体的でグレードが低くてもかなり楽しく登れます。

Em & Ems 上部

Em & Ems 上部

こちらは「Em & Ems」登攀中にEちゃんが撮ってくれていた写真です。ちょっとしたオーバーハングを乗っ越したり、チムニーのように登る箇所があったりとすごい楽しい。

午前中の終盤で登った6cのオーバーハングのルートが今回の旅の中で唯一トップアウトできないルートとなりました。デシマルグレードでは5.11bになり、一手もんのルートですがあの核心部は11bあったと思います。クイックドローを2本かけた状態で諦めることとなり、ここで登場するのがガイドのモンさん。11台のルートを登るモンさんを初めて見ることになるので、同行していたBさんに俺のiPhoneを渡して動画を撮ってもらいました。核心部も含め散歩するように登るモンさん…さすがでした。

5.11bクラス登攀中

動画からキャプチャした核心部通過中のモンさん。画像からは分かりづらいですが背中がほぼ地面と水平になるくらいかぶった壁です。なんなく登りきりクイックドローを回収しながら降りてくるモンさんでした。このルートにかなりのパワーを使ったので、午前中の残りは簡単なルートを一本だけ登りあとは残りの面々が登るのを見学していました。

カップルそれぞれといろいろと話してみると、なんでもEちゃんのいとこ(だったと記憶している)はトロントにある俺が卒業したのと同じカレッジのカリナリー(調理師)コースを卒業しているとのこと。先日の千葉グルメ紀行時にも同じカレッジ卒の人とニアミスしたりと、最近は偶然あのカレッジの名前を聞くことが多い。カナダ出身の彼女の方は次はニュージーランドへワーホリ、アメリカ人の彼氏は次は香港で仕事するため移動するのだとか。自由な人たちばかりです。

壁を背景にグループ写真
この日のメンバーでの集合写真。

前日同様、俺以外のメンバーは午前中のみ申し込んでいたので二人は午前中のみで解散。二人はこのままPra-Nang Beachに残るということだったので、この日は一人で前日行ったエリアにて昼ごはんを済ませました。

そして午後の回。「Muay Thaiエリアにトライしてもらいたい6b+のルートがある」というモンさんに連れられて向かったのは、前日訪れたOne-Two-Three Wallのすぐ右隣にあるエリア。午前中でアップは済んでいるので早速挑戦します。6b+といえばデシマルでは5.11aクラスのルート。外岩としては自身の限界グレードということになります。ルート名はその名もずばり「Muay Thai」。このエリアを代表するルートなんだろうと思います。

思い出のMuay Thai
思い出に残るルート。

コルネが突き出たまさしく石灰岩!というルート。写真の左端をコルネを使いながら登り、上部緑色の葉っぱがあるあたりに終了点があります。垂壁ではなく薄くかぶっており、コルネをうまく使うことが攻略のポイントでした。このルートを勧めた理由は「おそらく日本ではあまりない形状のルートだから」とのこと。気配りもしてくれるあたり本当いい人です。

1トライ目。写真で言うと一番下に見える小さなコルネをどうしても超えることができず敗退。午前中に敗退した6cルート同様、クイックドローを2本かけた状態で降りてきてしまいました。「もう1トライするか?」と聞かれたものの、どうやったら攻略できるか皆目検討もつかなかったので首を横に振ってしまう俺。なんとも情けない。早速モンさんが登りはじめ、下部のコルネをするりと突破します。突破方法は、俺が左手で掴んで身体を持ち上げようとしていたところを、右手で掴んで身体を上げて左奥にあるホールドを左手で取るというやり方。「あの方法であれば俺もいけるのでは…?」と、消えかけていた闘志が再び燃えてくるのを感じました。

上まで登り、クイックドローは回収するか?と聞かれたので「回収で」と伝えて下まで降りてきてもらう。再トライするか迷いましたが、(次いつ来られるかわからない。なんで再度挑戦しないんだ?)という心の声が聞こえ「やっぱりもう一度挑戦したい」とモンさんに伝えます。心なしかモンさんも笑顔だったような気がします。

少しレストし、再トライ開始。クイックドローはすべて回収済みなのでマスターでの再挑戦です。開始後すぐにやってくるのが前回敗退した下部のコルネ。モンさんが登っていたイメージを頭に再現しながら、使う手を前回の左手から右手に変え身体を持ち上げ、左手で奥のほうのホールドを掴んだら左足を一気にコルネの上まで上げました。そこまで持ち上げれば身体が安定し、次のボルトにクイックドローをかけられます。一ヶ所目の核心を突破しました。そしてそのまま少し上がると次のボルトが現れ、そこにロープをかければ座ってノーハンドレストが可能。下の写真で言うと、俺が右足を乗せているでかいコルネがレストポイントに当たります。

Muay Thai写真1
ビレイしながらどうやって撮ったのかわかりませんがモンさん撮影。

レストしながら周りを見てみると、韓国人のグループが観戦しているのが見えました。せっかくここまで登ったので完登してやるぞ!とさらに燃えたことを覚えています。そしてレスト後、再出発。正直ノーハンドレストできる場所がなければ到底完登できなかったと思います。

Muay Thai写真2
少し左にずれて上のくぼみを捕らえる。

Muay Thai写真3
身体を上げて左側のコルネの上まで上がります。

正直写真のこの位置で腕がかなり限界に来ていましたが、コルネの上がコーナーになっていたので足を開けば再びノーハンドレストできるとふんで気合で突っ込みました。そして予想通りコルネ上には再びノーハンドレストできるポイントがありました。

Muay Thai写真4
がっつりレスト。

どれだけレストしても前腕はもうパンパンでしたが、ここまできたら何が何でもノーテンで上まで行ってやるという「ゾーンに入った」ような状態だったように思います。ここからは俺がいる位置の右側にある黒い塊?側に身体を移動させる必要があるのですが、これが結構遠い。加えて結構な高さなのでこの位置でトラバースのムーブを起こすのは恐怖との戦いでもありました。下の人たちが見上げているのがまた緊張感を高めます。幸いなことにノーハンドレストできる場所だったので、足を置く位置や身体の体勢を色々と試しまくりどうにかこうにか右への移動に成功。そしてあとはほんの少し登ると…

Muay Thai写真5

完登!これは本当に心の底から嬉しかった。クライミング仲間からは「11台をお土産に持って帰ってきてください」と言われていたもののまったく自信がありませんでしたが、初めて来たタイの岩場で5.11aを登れたことで得られた自信が何よりも自分にとってのお土産になったように思います。

疲れ切っていたので下部のハングしている箇所のクイックドローの回収に大苦戦しながらも地上に降りると、モンさんが笑顔で迎えてくれました。観戦していた韓国人のグループからも口々にねぎらいの声をいただく。レストはしまくるわトラバースするムーブを見つけるのに苦労するわと超粘って必死感が伝わったのでしょう… こういうルートをスマートに登れる実力を身につけたいものです。

大レスト後、まだ少し時間があったので隣のOne-Two-Three Wallにあるボルダーチックな6bを紹介してもらい挑戦することにしました。下部からボルダームーブで途中も攻略が面白いルートでしたが、疲れ果てていたのでツーテンでトップアウトが限界。グレードは体感的には5.10b/cって感じでした。ムーブを覚えている状態で後日サラッと完登できたあたり、当たり前ですがこの日は疲れていたんだなと思い返します。

Muay Thai Wall

  1. Muay Thai 6b+ ×
  2. Muay Thai 6b+ mRP

One-Two-Three Wall

  1. Short & Savage 6b 2テン

16:15まで登り、前日同様ロングテールボートで帰還。大満足な一日でした。モンさんにアオナン周辺でお勧めのレストランを聞いてみると、「チャングンという店が美味しい」と教えてくれる。シャワーを浴びてホステルでダラダラし、チャングンなる店を探しに出かけます。

…が、かなり遠くまで歩いたもののそれらしき店が見つからない。一度ホステルあたりまで戻り、見落としたのではないかともう一度遠方まで出発。やはりない。が、口の中でチャングン、という言葉をリピートしていたところ目の前にこれではないかという店が現れました。

チャングン… ジャングン… ジャングル… ジャングル!?

ジャングルキッチン

ジャングルキッチン

これか!!入り口は少し並んでおり、列に加わりメニューを眺めているとさらに後ろに「ここを目指して遠くから来た」とか言っている外国人も列に加わる。どうやら人気店のようで、モンさんが言っていたのはおそらくここ。メニューが多すぎるので店員にお勧めを聞いてみると「Red CurryとFried Black Pepperがお勧め」ということだったのでこれらを頼んでみることにしました。

ジャングルキッチン店内
店内は抜群の雰囲気。

タイといえばシンハー
タイといえばシンハー。5.11a完登の自分へのご褒美(注: 毎日飲んでました)。

そして出てきた料理がこちら。

ジャングルキッチン料理

上がFried Red Curry、下がFried Black Pepper。カレーの辛さは

  1. リトル
  2. ミディアム
  3. スパイシー
  4. タイスパイシー

という4段階あるらしく、試しにスパイシーを頼んでみたところ…

辛い。

辛すぎる。口の中が痺れる!と思い料理の中をよくよく見てみると…

大量の唐辛子

辛さの正体はこいつらか!!唐辛子を避けて食べたら程よい辛さとなりました。Fried Black Pepperも実に美味しかったです。入って正解のお店でした。食後はホステルに帰りがてらコンビニでさらに缶ビールを買い、ホステルのベランダで一杯飲み0時半くらいに就寝。翌日はクライミングを行なわないレスト日です。

四日目に続く→

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