旅八日目。翌九日目は一日のほとんどを飛行機の中で過ごすので、実質的に旅の最終日に当たります。八日目と九日目はタイを完全に離れマレーシアのクアラルンプールで過ごしたので、これまでの「プラナン・クライミング紀行」からタイトルを変更し「クライミング紀行番外編」としています。国が変わってもクライミング紀行に変わりはありません。そしてこの回をもって長かったクライミング紀行が終了します───
旅八日目:2月6日(木)
8時前に起床。何故かアベンジャーズの世界にいる夢を見たと記憶しています。前日組んだ予定通り、まず向かったのはバクテー(肉骨茶)で有名な「新峰肉骨茶」。そもそもバクテーという食べ物自体前日知ったわけですが、バクテーとはマレーシアのスープ料理で漢方とにんにくで骨付き豚肉を煮込んだもの。いわゆる薬膳と呼べる料理のようです。昼か夜に食べる印象でしたが朝から食べられる料理のようで、クアラルンプールのバクテーで有名な新峰肉骨茶も朝から開いています。食べログのページもあったので載せておきます。
新峰肉骨茶(Sun Fong Bak Kut Teh)
https://tabelog.com/malaysia/A8201/A820108/82000043/
ホステルから新峰肉骨茶までは徒歩25分程度。ためしに歩いてみることにしました。
ホステルからレストランまではほぼ大通り沿いを歩くので特に問題はないのですが、ドライバーファーストと言っていいくらい車が優先されるので徒歩では本当に観光しづらい。街のつくりや信号などにオーストラリアの面影を感じました。
そして8時半にレストランに到着しました。
朝一だったからかお客さんはほとんど入っておらず、貸しきり状態。数あるメニューの中から、注文したのはもちろんバクテーです。そして出てきたのがこちら。
見た目から味があまり想像できませんでしたが、うむこれは…
一歩間違えたら薬のような味になってしまいそうな料理なのに絶妙なバランスで美味しくまとめています。漢方ベースということで実に身体に優しい味がしました。まさしく滋味。滋味ですよこれは。五臓六腑に染み渡ります。使われている肉の部位としては韓国料理のカムジャタンの肉と似ているような気がしました。トッピングで味を変えるとまた美味しいということで、店員さんがトッピングを小皿に分けてくださいました。店員さんの対応がグッドです。
海鮮炒飯もあわせて注文し、前日夕食を摂っていなかった分もカバーするくらい朝からがっつり食べました。
朝食後はトイレに立ち寄ったりするため一旦ホステルに歩いて戻り、そこからまた歩いてKTMという路線のBank Negara駅に向かいます。ホステルから歩いて20分くらいの距離にあるBank Negara駅からはクアラルンプールの観光名所バトゥ洞窟行きの電車が出ています。
電車が来るまで40分くらいあったので座って待っていると、日本人らしき老夫婦がトークンを機械で買えずに困っているようでした。実際のところは分かりませんがおそらく機械が故障していたようで、機械ではなく受付で購入するのが確実です。こちらから声をかけようとしたところで、先方からこちらに日本語で話しかけてくる。現地民ではなく日本人として見られたようで安心します。左記を説明し、受付に向かった旦那さんはトークンを買うのかと思いきや、受付の近くにある時刻表を見て渋い顔をされて俺が座っていたところに戻ってきました。このご夫婦はバトゥ洞窟ではなく植物園?かなにかに行こうとしていたらしく、時刻表を見たところなんと次の電車は3時間後。日本の田舎でももっと本数あるだろ…と思いましたがないものは仕方がありません。バスが一部無料である話や、ICカード乗車券が使いづらいという話で大いに盛り上がる。お二方は共に定年されて時間があり海外に行きたいが、あまり長時間座っているのは腰に悪いので東南アジアあたりがちょうどいいのだとか。それでも直行便では辛いのであえて韓国経由にしているなど、そういう経由便の使い方もあるのだなとある意味目から鱗でした。
さて、電車が来る時間が近づいてきたのでご夫婦とお別れしてホームに向かいます。電車は時刻どおりに来ました。写真は撮っていませんが車両もまたオーストラリアの車両っぽかったように記憶しています。降りるときになって女性専用車両だったことに気づいたのは内緒です。
所要時間は約30分。バトゥ洞窟の最寄り駅にも時刻どおり到着しました。バトゥ洞窟はなんでもヒンドゥー教の聖地らしく、調べた限りではなかなか見ごたえがありそうな場所です。宗教施設ということもあり、短パンにビーチサンダルは失礼にあたると思いクライミング用のロングパンツにスニーカーで行きました。駅を出てバトゥ洞窟方面に向かうと、まず現れるのがハヌマン像。
でかい!色使いが独特!バトゥ洞窟への期待が高まります。ちょっとした露店街のような道を歩いて洞窟の入り口まで向かいました。
そして到着した洞窟入り口。とんでもないサイズ(40m以上あるそうな)の金色の巨大像が迎えてくれます。この巨大像はヒンドゥー教の神様であるムルガンの像だそうです。
とにかくでかい。そして噂では許可なしに塗られたとかで物議をかもし出しているとかいう272段の極彩色の階段が奇抜で強烈な印象を残します。洞窟に入るのには特に費用が発生するわけではありません。有料のトイレに立ち寄った後、早速登りはじめます。
272段は多いといえば多いですが山に登りまくっていればどうってことない段数で、同じ階段であれば羽黒山や山寺のほうが断然きつい。何を比較しているのかという話ではありますが…。
そしてバトゥ洞窟内部の写真がこちら。
スケール感がすごい。思った以上にものすごく広い空間です。似た洞窟では以前沖縄で鍾乳洞に行ったことを思い出しましたがスケール感がまったく違います。自然が作り出した圧倒的な造形美!これは見に来て正解でした。遥か天井部?には自然の作り出した天然のトップライトがありました。
クアラルンプールに来るならバトゥ洞窟は絶対にはずせません。写真や動画を撮ったりと楽しんだらもと来た道を戻り階段を下ります。
階段を下ったら、階段付近にあるヒンドゥー教の寺院?に立ち寄り見学。
とにかく色使いが独特で見ていて飽きません。バトゥ洞窟、お勧めです。
さて、あらかた楽しんだら駅に戻ります。この時点で外はかなりの湿度で気温も高く、外にいるだけでかなり体力を奪われます。日中に外を出歩いて観光するのはかなり過酷なので、もともと予定していたとおりEco City Mallというモール内にあるボルダリングジム「Camp 5」に向かいました。なぜクアラルンプールにいるのにボルダリングジム?と言われることも多いのですが、左記のとおりクアラルンプールは非常に蒸し暑くて日中長時間外を出歩くのは厳しく、そして今回の旅は「クライミング紀行」。どこにいても最優先なのはクライミングをすることなのです。
電車やモノレールを乗り継ぎEco City Mall内にあるジムに辿り着いたのは14時前。翌日のコンペに向けてホールド替えをするのであまり課題がないということでしたが、それでも十分に課題が残されていたので入店することにしました。
モール内にあるのにボルダーに加えてリード壁、さらにはオートビレイ機まで何台もそろえている充実さ!さすが海外のジムです。なんでもCamp 5の別店舗はアジア最大級の広さを誇るとか…。
この日は靴とチョークバッグのみ持参していたのでボルダーのみです。受付を済ませて14時15分くらいからボルダリング開始。途中でモール内のスーパーでオレンジジュースを買ったりしながら、17時半くらいまで打ち込む。プラナンの外岩で軽く痛めていた左手の小指をこの日さらに痛めてしまいました。それでも帰国してからジムに通いつめているあたり、今年は本当にどっぷりとクライミングにはまっています。
18時くらいに退店し、ホステルに戻ったのが18:45くらい。そしてホステルに戻った瞬間にスコールが降り始めました。この旅初めての雨かもしれません。夕食を摂る予定をしていた夜市に行く前に周りを散策しようかとも思っていましたがそんなことを悠長にできる天気ではなくなりました。20時過ぎにまた激しく降り始め、20:15くらいに小降りになったのでこの隙に夜市に向けて出かけました。
ホステルから夜市・Jalan Alorまでは歩いて15分くらいの距離。道中は屋根もあったのであまり濡れませんでしたが、夜市に近づいたあたりから屋根がなくなり結構雨に降られました。風邪を引きたくなかったのであまり散策はせず見た目で決めたレストランに入店します。
夜市だけで比べると以前台湾で訪れた夜市のほうが地元感があり印象が良いです。クアラルンプールの夜市も悪くはありませんでしたが、観光地化しすぎて観光客ばかりで物価も高い。旅最後の夜だしと思い頼んだビールはRM24.00(640円くらい)!想定以上に高く、現金が底を尽きたので近くのセブンイレブンで追加でキャッシングする羽目になりました。
ビールに焼き鳥が最終日の夕食でした。日本か。さて夕食後はホステルに戻り、荷物を軽くパッキングしたりしながら過ごし0時半くらいに就寝。翌日はついに日本行きのフライトです。
旅最終日:2月7日(金)
8時過ぎに起床。ホステルで過ごすよりも空港のほうがいろいろとありそうだったので、フライトは14時40分でしたが少し早めにホステルを出る予定でいました。
クアラルンプールで宿泊したドームズKL2は宿泊代がなんと
くらい。超激安です。女性の一人旅ではあまりお勧めできないエリアではありますが男性のバックパッカーであればかなりお勧めです。ベッドバグが心配でしたが現れなかったしシャワーもお湯が出ます。ベッドがきしんだのが気になりましたが他は特に悪い点はありませんでした。
ホステルを出たのは9時くらい。到着時は徒歩で辿り着けませんでしたが日中なら行けるだろうと踏んで徒歩でKLセントラル駅へと向かいました。そして読みどおり無事駅に到着。ちょうどバスが来ておりすぐに出発。ラッキーでした。このとき乗ったバスはWi-Fiも繋がるハイスペック。今のご時世、海外に行ってもネットにはほとんど困りません。
1時間もかからないうちに空港に到着(11時前)。チェックインを済ませたところ、クラビー空港に引き続きまたもや重さを量られない。適当か。無事チェックインも済んだところで、残っていた現金RM10.40(300円弱)で遅い朝食兼昼食を済ますべくフードコートへ向かいました。そして見つけたのがちょうどRM10で食べられる炒飯。この旅では炒飯ばかり食べていた気がします。
実はこの旅の最中、自分の人生プランに少し動きがあり2月末に千葉県内で引っ越すこととなりました。不動産屋への連絡をタイから行なっており、クアラルンプールの空港で少し時間が余ったので引っ越しの相見積をとってみることにしました。ネットで相見積の依頼をかけたところ、不在着信がとんでもないことに。
出られません!帰国後、引っ越しに向けて本格的に動くこととなります。搭乗ゲート付近に移動し14時過ぎに飛行機に搭乗。無事飛び立ち、定刻より少し早い22時15分に羽田空港到着。機内で今回持参した「春を背負って」を読み終わりましたが、これが実にいい小説でした。心に響くフレーズはいくつもありましたが、今回の旅と重ねて特に刺さったのは
自分というトンネルをいくら奥へ奥へと掘り続けても、出口は決して見つからない。空気もない光もない世界から抜け出すには外へ向かうしかないんだよ。人のいる場所へ、心と心が触れ合う場所へ。──春を背負って P136
これだから読書はやめられません。さて、日本到着後は電車を乗り継ぎ23時半過ぎに最寄の駅に到着。相変わらず機内で食事を摂っていなかったので空腹でぶっ倒れそうなお腹にトンカツでエネルギー補給をしました。
久々のTHE日本食(?)です。その後スーパーで買い出しを行なったり部屋で賃貸契約の解約通知書を探したりしているうちにいつの間にか夜中の1時半。翌日(日付的にはこの日)からの予定に備えて寝ることにしました。
これにてタイとマレーシアの2ヶ国を巡ったクライミング紀行が終わりを迎えました。渡航するまではプラナンでのクライミングの日数が少ないのか多いのか予想できませんでしたが、結果的には3.5日間のクライミングでちょうどよかったように思います。土地勘を得た今であれば、移動日を含めても合計4日間の連休があれば弾丸でタイにクライミングに行くことが可能です。
今回の旅で得たことは、新しい技術でもなんでもなく
打ち込めば打ち込むほど実力が上がる
という至極当然のこと。ただ、普段の生活の中ではどうしてもほかの事に気をとられたりジムに行っても本気で打ち込まなかったりと、繰り返し練習しても実力が伸びない「プラトー」状態に陥っていたように思います。
遡れば2015年。当時所属していた山岳会の人に「この調子で続ければ来年には12台にいける」と言われ、そこから5年近く経ってしまいました。もちろんその間なにもしていなかったわけではなく、2016年に全国を巡った山旅や、2018、2019の夏にとにかく夏山に通いまくったことは自分にとって必要なことであったし得難いものを得られたという実感もあります。ただ、クライミングに本気で打ち込めておらず次のグレードへの壁を突破できずに数年過ごしたこともまた事実なわけです。
5.12台を目指し、再びプラナンビーチを訪れる。今回クライミング紀行を経て、上に書いた気付きに加えて得たものは長いプラトーからの脱却とモチベーションの向上。得難いものを得られたような実感があります。
年内に11台後半まで登れるようになり願わくば未知の12台に突入できるよう───
NEVER STOP EXPLORING!!
クライミング紀行 完