奈良放浪記其の五: 日本最古の縦走路・大峯奥駈道を行くDAY5

大峰奥駈道5日目。この日は玉置山にある玉置神社を目指します。朝多少明るくなるのを待って、5:45くらいに出発。この先の熊の出没情報は書かれておらず、多少安心しておりましたが生息域であることは間違いないので気にしながら歩を進めていきました。まず笠捨山という山を目指しますが、これが思いのほかキツかった!朝一でいきなり標高1,100mくらいの行仙山小屋から1,353mの笠捨山まで一気に登ります。4日間の蓄積された疲労もあり、まだ目が覚めていない身体に突然の登りはかなり堪えます。笠捨山にて、ついに石標に熊野本宮大社の文字が!まだ27.6kmと果てしなく遠いのですが、ようやく現実的にゴールが見えてきました。


ついに熊野本宮大社の文字。ゴールが射程圏内に入ってきました。

笠捨山の先は地蔵岳という山を目指しますが、地蔵岳周辺一体は地図上で破線になっており多少の不安がありました。行ってみるとその辺は一体が岩稜チックで鎖を伝って垂壁を6m程度降りる場所などがあり、こういった道はむしろ脚に優しく、岩稜歩きは苔むした急斜面より安全だと個人的には思うのですが、とにかくあっという間に突破。自分の中で5日目のハイライトはこの地蔵岳周辺だったように思います。印象に残っているのは、地蔵岳に向かう道中見かけた妙な生え方をした木で、寄生獣というか物の怪というか、とにかく薄気味悪い印象を覚えたので写真に撮りました。動き出しても不思議ではない気がします・・・。


手みたいな形をしており、右側には空洞があります。ミギーかと思いました。

破線のコースの先は林道と交差したり離れたりしながら進んで行き、一旦完全に車道に入ります。車道脇に世界遺産の碑を見てからすぐにかつえ坂という玉置山への入り口があり、登ればすぐに玉置山。


世界遺産の碑。右奥に見えるのがかつえ坂への入り口。


玉置山の頂上、展望はあまりなく天気もどんよりしていました。

玉置山を越えて反対側を少し下ったところに玉置神社があります。玉置神社へは車でのアクセスがよく、この日も多くの参拝者の方々が来ておりました。48時間ぶりの人との出逢いです。が、ここでちょっとしたハプニングが。御朱印を頂こうと社務所の受付でベルを鳴らしているのですが一向に中から人が出てこない。みんなで「おかしいですねぇ」なんて話しながら、30分くらい誰も出てこないので、中で人が倒れているのではないかと心配になったので俺一人中に入って「すみませ~ん」と何回か呼びかけてみると、ようやく奥から「はい」と返事が。そして奥から人が出てきたのですが、社務所内で出会い頭いきなり「ここは入ってはダメだよ!」と言われ、「いや、外に人がたくさん並んでいますよ」ととりあえず状況を説明すると、「用があったらベルを押して下さい」なんて言い始める。「いや、ベルは何度も押しましたよ」と反論するも、無視して受付のほうに向かっていくので、腹が立ちながらもとりあえず表に出る。他の参拝者の方に小声で「すみませんねぇ」なんて言われるので「いえいえ」なんて会話をしましたが、この受付の人は中で何をしていたのやら。受付の人が一旦奥に下がった折、上で書いた話しかけてくれた参拝者の方がまた小声で「多分寝てたんでしょうねぇ」と言うので、「でしょうね・・・」と返しましたが、待たせて申し訳なかったという謝罪の一言もなく、待つのが当たり前だみたいなあの態度は本当にいただけない。社務所の中にいるというだけで、参拝に来た人たちにどんな態度を取っても許されるのだろうか?俺はそうは思わない。世俗的な慣習に当てはめて考えることが出来ないとは思いますが、人と人とのやり取りの中には最低限のマナーというものがあるのではないだろうか。


頂いた御朱印。見返すと複雑な感情が宿る御朱印となりました。

同じく玉置神社で、何人かの人と話す機会があり「吉野から来ました」なんて話をしてみるも、あらそう・・・くらいの反応。髭面で薄汚れた登山服を着ている俺は不審者然としていたかもしれませんが、3日目の八経ヶ岳周辺で同じ話をすると人によっては握手さえ求められたくらいで、あまりの反応の開きに「何かを知っているか知らないかで、人の反応は大きく異なるんだよな・・・」とある意味当たり前のことを身をもって再認識しました。ある人が行っていることに対して、その内容を評価するには自分自身に知識がないといけない。同じ登山者同士なら一瞬で分かり合えるようなことでも、ただ参拝に来た登山に全く触れたことのないような人からしたら「なんだろうこの薄汚れた人は」みたいな反応になってしまう。もしかしたら、俺も違うところで人に同じ態度をとっているかもしれないな・・・と、反面教師的に反省したのでした。

さて、テントを張れるところがある、という情報を聞いていたのでそれを上で書いた同じ受付の人に聞いてみたところ、「鳥居を抜けてすぐのところの駐車場なら」とあまりにもそっけない返事。そもそも鳥居だらけのこの神社のどの鳥居のことを指しているのやら。あまりにも漠然としすぎているのでこちらからいくつか質問をするも要領を得ないので、とりあえず地図を見てみると境内を出て30分くらい下ったところにP(駐車場の意)というマークが。翌日の行程を30分縮められるし、駐車できるようなスペースならテントも張れるだろう、ということでそこに向かってみることにしました。

そして30分後。無事Pと書かれた場所に到着はしましたが、そこは駐車場というよりは「車が3台程度停めようと思えば停められる場所」で、舗装された林道と舗装されていない林道が交差する展望台のようになっている場所でした。


下ってきた出口、左が舗装された道、右が舗装されていない道。


上の写真と同じ場所から、右を向くとこんな感じになっています。何故か杖のような木の棒が置いてありました。

時間はまだ14時過ぎだったのでまだ進もうと思えば進めましたが、この先進んでもテントを張れるような場所はなさそうだったのでここをこの日の宿にすることにしました。今回の旅で初のテント泊です。


設営完了。

近くで木材の搬入作業を行っているということで大きな音がしていましたが、逆に動物が寄ってこなさそうだったのである意味安心。17時くらいに作業員の方々が撤収してからも舗装された林道を何台か車が通り過ぎ、安心して食事を摂って一休みしていたらいつの間にか眠っていたようで気づいたら20時過ぎ。なにか気配を感じたので少し耳を澄ましてみると、外で足音が・・・。真っ暗闇でライトも点けている様子がないので明らかに人ではなく、嫌だな・・・と思いながら、テントから出るのもどうかと思ったので、とりあえずテント内で鈴を何回か鳴らしてみると足音がしなくなったのでやれやれです。もう一度寝て、次に目が覚めたのは早朝の4時過ぎ。外に出てみると満天の星空で、少しの間ぼんやり空を眺めていると流れ星が遥か彼方を通過していきました。最終日の天気に期待を持ちつつ、テントの中に戻りもうひと寝入り。

最終日に続く→

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