厳冬期登山編 PART V: 冬の安達太良山 前編

冬の安達太良山、移動日に引き続き登山当日です。予定通り6時20分起床。寒すぎて寝袋から出られません。なんとか6時半に寝袋から出て正面に見えたフロントガラスはこの状態でした。

がっちがちのフロントガラス

ガッチガチに凍っています。ちょうど太陽が昇り始めたころで、前日は見えていなかった真っ白な安達太良山に陽の光が当たってモルゲンロートを発生させていました。

駐車場から見る安達太良山

思ったよりも白い!武者震いします。いつもは出しっぱなしの寝袋ですがこのときは担いでいく必要があるので収納。ズボンもいつもは登山用のものを履いて寝てそのまま出発していますがこのときはFinetrackのガチのものに履き替えます。このズボン、思い出せる限りで2回目?くらいの装着と思われる。ようやく本格使用してもらえるこのズボンもさぞ喜んでいたことでしょう。さて、順調に準備を進めてほとんど完了しますが、お湯がなかなか沸きません。こういうときにジェットボイルが欲しくなりますが早く準備を開始すればいいという話でもある。7時10分過ぎにようやくすべての準備が完了。登山口に向けて出発します。今回のルートは2016年に登ったときと同様、奥岳登山口から登ります。この日の目的地は安達太良山経由くろがね小屋。下山含めても本来日帰りで行けるコースを一泊二日にしているので時間的には余裕です。

徐々に雪が増えていき最終的には真っ白になった道を慎重に走らせて登山口の駐車場に到着したのが7時45分。前々日に山道具屋から電話した際に「駐車場は奥の左」というざっくりとした情報を聞いておりましたがその位置が全く分からない。ネットで調べてようやく発見しましたが、どうやら看板が雪に埋もれていたようです。

すでに結構車がいる

上の写真の左端の雪の塊の中に看板が埋もれていたようです。埋もれていなくても車からでは見えませんが・・・。これだけ車が来ていれば間違いなくトレースはできています。狙い通りというか、他力本願というか・・・いずれどこかで先行してトレースを付けようと思う。いずれ、ね。駐車場にいた時点では体感的には那須岳のときのほうが寒かったように感じました。風があまりなかったからかもしれません。8時前の時点でどんどん車が増えてきており、「平日だし人が入っていなかったらどうしよう」というのは全くもって杞憂だったことを知ります。そして8時10分過ぎ、2021年4回目となる厳冬期登山の開始です。

THE登山口
登山口にて撮影。8時15分。

道は真っ白
最初から登山道は真っ白。

20分程度歩いた時点でゲレンデに出ました。ゲレンデの脇を通って先に進みます。

ゲレンデ、到着

トレースというか踏み跡というか、誰かの歩いたあとのおかげで道に迷わずラッセル不要で歩けます。先に入ってくれた方、本当にありがとうございます。

つぼ足

ゲレンデの傾斜が徐々にキツくなっていき、8時55分に何年かぶりの12本爪を装着。

アイゼン装着!

足は重くなりますがつま先にも爪があることで坂道での推進力が一気に増します。雪はかなり締まっており、硬い雪を踏みしめる心地いい音を聞きながらの登山でした。

こんな道を登ります
リフト沿いを進んでいきます。

紺碧の空
空がめちゃくちゃ碧い!9時20分撮影。

五葉松・・・平?
おそらく五葉松・・・平と続く場所。

そして9時40分。登山口から1時間25分で薬師岳の標柱のある場所までたどり着きました。コースタイムは1時間20分なので少し遅れていますが、アイゼンをつけたりと普段は発生しない作業に時間をとられました。遠方には乳首の愛称で知られる安達太良山の山頂が見えています。

遠方に安達太良山

こちらは蔵王!
遠方には冠雪した蔵王!

その少し先には有名な「ほんとうの空の碑」がありました。前回は曇天で見えなかった本当の空をこの日は最高のかたちで拝むことができました。

この上にほんとの空がある
これがほんとうの空!

ようやく拝むことができました。さて、この地点でまだ山頂への行程の半分程度。まだ先は長いです。ここに来るまでに見かけたほとんどの人はスノーシューやわかんを装着していましたが、この日の雪の締まり具合とトレースのつき具合であれば結果的にはスノーシューもわかんも購入しなくて良かったと思います。あったほうがいい場面もあったかもしれませんが、どちらもかさばるのに加えて年何回使うか分からない代物。今回の山がいい試金石となりました。さて、ちょっとした樹林帯があったりしながら徐々に「乳首」に近づいていきます(誰が名づけたんだ・・・)。

何者か
何者かの足跡。これには惑わされんぞ!

気持ちが良すぎる
このあたりを歩くのは本当に気持ち良かった。

このあたりですれ違った下山中の二組のグループによると前日はすごい嵐で視界不良だったとかなんとか。登山の日程を木金ではなく木曜日を移動日として金土に設定したのは本当に正解でした。さて、このあたりでちょっとした道間違いが起きます。正確には山頂に向かっているので間違い、ではないのですが、登山道から外れた道を歩いてしまいます。後ろを振り返ったこの写真で説明すると

道が分岐している

自分は直登していますがよく見るとこの写真で言うと左方向にも踏み跡があるのが分かります。目の前を歩くスキー板をつけた女性登山者がそっちの方向に向かったので、てっきりそっちはスキーをやる人向きの道だと思っていましたがどうやらそっちが登山道だったらしく・・・。自分が進んでいる方にも踏み跡自体はたくさんあるので非常に分かりづらい。このときはログをつけていなかったので正確な位置は特定できませんが、以前のログで見るとおそらく

前回のログ

本来は画像右端から赤い実線(前回歩いた道)に沿って山頂へ歩くべきところを二点鎖線(地域の境界線?)あたりを歩いて直登したようです。

木の上のほうを歩いている
普通に人が歩いた跡があるので厳密には間違えたわけではない。

登山道ではないな、と思ったのはこのあたりからです。

あきらかに道がない。

ここはおそらく樹林帯の「上」。木の上のほうに積もった雪を歩いている!そこまでびっしりと積もっていたわけではないのでひたすら踏み抜き続けることになります。

足跡はあるが・・・
人が歩いてはいる。

すごい光景です。
えらいことになっている。

踏み抜きすぎて歩くのが尋常ではなく難しい。ある意味でこの登山の最大の難所だったかもしれません。それでもなんとか踏み抜き地獄を突破し・・・

ついにここまで来た!

山頂一歩手前に到着!ここで登山道と合流するようでした。山頂はすぐ目の前。間髪入れずに山頂に向かって前進します。そして11時20分・・・

安達太良山、山頂

登頂!!

まさしく絶景!360度最高の景色が広がっていました。

真冬の磐梯山

磐梯山。2016年に登ったときは雨で大変でした。

遠方に飯豊連峰

中央に見えているのは飯豊連峰。その右に見えているのは吾妻連峰。吾妻連峰は最高峰の西吾妻山に登ったときよりも、仲間たちと福島を旅した時に登った一切経山のほうが印象に残っている。名だたる山々!青い空!最高すぎる。

前回と今回で同じ角度で撮っていた写真。中心には磐梯山。曇天の夏より晴天の冬!見事にリベンジを果たしました。

こちらには蔵王

遠方に見えているのは蔵王。どこを見ても名だたる山が視界に入ります。

こちらは那須岳

ここに見えているのは那須岳。空が澄み渡っており遠くの山々もばっちり見えます。さすがほんとうの空。

歩いてきた道を見下ろして

歩いてきた道?を見下ろして一枚。樹林帯の上をよく歩きました。

さて、山頂は風が強くてとんでもなく寒いので後ろ髪を引かれながらも滞在時間10分程度で標柱の立っている場所に一旦降ります。寒くて食事を用意している余裕はないのでここでは持ってきたお湯を使って温かい飲み物をつくりティータイム。至高の時間です。

山道具たち
ストックの長さが左右で違う理由は日曜日に判明することとなります。

そしてここから、エクストリーム撮影会が始まります。持参したのは

呆然と、ダンボー

ダンボー氏。

どこに連れてきやがったんだ、と言わんばかりの表情です。宇都宮で入手した囲炉裏もここで開封。

囲炉裏とダンボー

ぽつんと、ダンボー

ダンボールだと燃えるだろ!という突っ込みはなしでお願いします。指がちぎれそうになりながら30分も撮影会を行っていた俺を周りの人たちはどのような目で見ていたのだろうか。ダンボーをしまい、撤収準備が整ったのが12時10分過ぎ。くろがね小屋に向けて出発します。実に名残おしいですがお腹も空いており若干トイレにも行きたいという状況でした。

よくあの道を・・・
あの難路を人がどんどん登ってきている。

十字架?
イエスキリスト?

絶景過ぎて言葉が出ない。
こんな景色を見ながら小屋へ向かって前進開始。

見上げればそこには安達太良山
振り向いて見上げれば、安達太良山。

すさまじい冬山の景色
下界では見られないすごい景色でした。

スノーモンスター?
モンスター?

一旦思いっきり標高を下げて、そこから再び標高を上げて峰の辻という分岐点まで登ります。シュプールを描きながら滑走するスキーヤーが気持ち良さそうでした。そこから先はトラバース気味に山の斜面を横切り、一路くろがね小屋へ。このトラバースが結構緊張を強いられる道で、ピッケルを出すか迷いましたがストックでなんとか乗り切りました。そして13時少し前、くろがね小屋到着。

そして小屋へ・・・

アイゼンをはずし雪を払ったら小屋の中に入ります。すでにそこそこ人がいたと記憶しています。靴を脱ぎながら「そういえばマスク持ってきたっけ!?」と内心冷や汗をかいていましたがザックの上蓋に入っていました。最悪ネックゲイターで乗り切ろうと思っていましたがマスクがあって良かった。少し並んでチェックインを済ませました。安達太良山は山頂までは問題なくネットにつながりますが、くろがね小屋の位置まで来ると谷になっており電波が届かずネットにつながりません。ネットにつながりたくてもつながらないというのはデジタルデトックスという意味ではちょうどいいように思います。非常に雰囲気が良いくろがね小屋。前回訪れた際のブログでは

もし次回があれば縦走とからめて泊りできてみたい。小屋の方に「最高でした、また来ます!」と言い残し、下山。

などと書いており、4年と5ヶ月経ってようやく実現しました。くろがね小屋は建て替えに伴い現在の姿での営業は2020年3月31日を予定していましたが、工期の遅れで2021年3月31日までの営業になったので今回訪れることができました。自分が現在の姿のくろがね小屋に行く最後の機会だな、なんて思っていましたが、今調べたところ工期の更なる遅れで2023年3月末までの営業になったのだとか。当初の予定より3年も遅れている工期とはいったい・・・。なんにせよ、次の冬にも訪れるチャンスがあるかもしれません。

チェックイン後の流れは正直あまり覚えておりませんが、間違いなく空腹だったので2階の大部屋で自分のスペースを確保し軽く荷解きしたら、まずは1階の共有スペースで持参したパンを二つ食べたような気がします。そして待ちに待った温泉。こじんまりとした白濁した温泉が4年5ヶ月前と変わらぬ姿でそこにありました。感染症対策で同時に入れるのは3人までとしており、受付に置いてある札をもって温泉に行くことでスタッフの方が現在何人入っているか把握できるようにしていました。この時点で入っていたのは1名のみ。その方より「窓を開けるといいですよ」と教えてもらい開けてみたところそこには絶景!!入ってくる風がひんやりとしていて最高でした。少ししたら自分ひとりになったので、スマホを持ち込み温泉や景色を何枚か撮ってみる。

くろがね温泉

あたかも露天風呂かのような

最高すぎる・・・。ぼちぼち出るかと思い窓を閉めたところで別の方が入ってきたので、窓を開けるといいですよと話しかけたところ話に花が咲いてそのまま長風呂に突入。思い返せば小屋泊するのは2019年の年末から2020年の年始にかけて宿泊した雲取山荘以来で1年以上経っていました。新潟からこられたというこの方もたしか2019年の秋が最後だと仰っていて、たしか燕山荘と仰っていたような。そこで食べたチーズの味が忘れられず、山小屋でチーズをつまみにワインを飲みたくて今回は自分でチーズとワインを担いだのだとか。粋ですね~。さらにもう一人入ってきて最大人数になったところで先にあがることにしました。普段は長くても30分くらいで出る自分としては珍しく1時間前後も入っていたと思います。それくらい本当に最高でした。

温泉からあがって2階の大部屋でお酒とつまみの用意をしていたところ、マスクの男性が階段を上がって大部屋に入ってきました。

俺「今から温泉ですか?」
男性「いえ、今まで温泉に入っていましたよ」

あれ、どういうことだ?と内心首をかしげながら1階に降りてお酒の準備をしていたところで「マスクで分からなかったけどさっき温泉で思いっきり打ち解けた人じゃん!」と思い当たる。特に初対面の人がマスクをすると本当に顔が分からない。少ししたら降りてこられたので「温泉で一緒になった人ですよね、すみません汗」と声をかけてみる。マスクだと分かりませんよね~、なんて話で再び会話が盛り上がりソーシャルディスタンスを保ちながら宴会の準備です。

登場!ゆきんこ

久々に登場、ゆきんこ。東北といえば日本酒かな?と思いこの日は日本酒を持参していたのでした。時刻は14時40分あたり。真昼間から雪山を眺めながら温泉に浸かりそのあと夜までお酒を楽しむ・・・しかも平日に。いろんな意味で最高すぎる。火を使うのは床で、ということだったので足元でお湯をつくってゆきんこを浸けていたところ、温泉で仲良くなった方が受付でビールを買っている。1缶450円は山小屋としては比較的リーズナブルなので自分も温泉上がりに一杯やろうと購入。

そして宴会が始まる

乾杯して楽しい宴会が始まりました。外に雪があるということはそこにお酒を挿せば一瞬で冷えるので、チューハイとかもありだったかもしれません。

かわいいコンビです
ゆきんことダンボー氏になごむ。

途中で愛知県からこられたという男性の方が1名飲み会に加わり、3人で盛大に盛り上がる。もちろん、ソーシャルディスタンスを保ちながら。2人は登山口で一緒だったとかで既に顔見知りのようでした。新潟の方は安達太良山経由ではなく直接くろがね小屋に至る右回りのコースで登ったようですが、愛知の方は俺と同じルートで安達太良山を経由してきたらしい。ロープウェイを使用する予定で割りと遅めに出発したところ冬季は動いていないというオチ。スキー用のリフトを乗り継いで少し高度を稼いでそこから登ったのだとか。そんな話をしながらお酒がだんだんと回っていきます。話を聞いていて気になったのは新潟の方の住んでいるエリアの里山、五頭山。この方の住んでいる場所から車で20分程度で行ける距離にあり、冬は冬山らしい装いになりさらに近所に300円くらいで入れる温泉まであるのだとか。しょっちゅう登っているという話で、いずれ機会があれば訪れてみたいと思う。

17時から夕食の準備をするのでそれまでに撤収してもらいたいと言われていたのにもかかわらず、つい話が盛り上がりいつのまにか17時を過ぎている。大慌てで撤収して2階の自分のスペースに戻りました。

夕食の準備が進む
このスリッパの前あたりに座って飲んでいました。

上着がズラッと並ぶ
2階には山道具屋顔負けの登山ウェアのラインナップ。ここに宿泊している人たちのものです。

コッフェルなど片付けていると、新潟の方が「食事前に温泉にサクッと入ってくる」というようなことを仰っているので自分もついていくことにしました。これだけ自由に過ごせて温泉も入り放題という山小屋は他にはあまりないかもしれません。そして17時半、食事の時間です。美味しいカレーで有名というくろがね小屋。出てきたカレーは・・・

つい食べ過ぎてしまう美味なカレー

具がたくさん入っていて甘めで美味しく、なにより

おかわり自由。

せっかくなのでと思い2杯もおかわりしてしまい腹がパンパンではち切れそうになりました。食後にもう一度温泉に入ろうと思っていましたが、酔いと満腹感で一度横になったらまったく動けない。20時か20時半まで(たしか20時半)だったと記憶している温泉に入れるリミットになっても動けないのでもう諦めました。

消灯は21時。歯を磨いて星空を眺めてから寝袋に入りますが、食後から消灯までウトウトしていたので全然寝られない。軽くいびきも聞こえてきており、時間が経つにつれ輪をかけて眠れなくなっていきます。エアマットに空気を入れすぎて硬かったことや、枕にしていた着替えなどの高さが高すぎたというあたりにも原因があったかもしれません。翌日は6時半に朝食、それにあわせて起床です。

後編へ続く→

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