72座目の百名山: 御嶽山

御嶽山。2014年9月27日に日本における戦後最大の火山災害となる噴火が起きた山です。当時はまだ山を始めたばかりであまり身近に感じていませんでしたが、今では他人事ではありません。噴火から5年経った今年、山頂の剣ヶ峰への規制が7月1日から10月16日までの期間でいよいよ解除されました。解除されている間に行こうと考えていたもののなかなかチャンスが訪れませんでしたが、規制解除の期間終了間際の10月6日(日)についにその機会が訪れます。山行記録に先立ってまずは今回のチームを紹介したいと思います。

チーム紹介

筆者「俺」。全体的な装備の刷新が必要だとひしひし感じる今日この頃です。
山仲間「I」。来年は車を入手する予定で更なる活動範囲の広がりが期待される。
スーパー女子大生「ちゃんM」。福島から東京に戻り帰宅せずにそのまま御嶽山に向かう相変わらずのパワフル女子。

それでは早速山行記録を綴っていきたいと思います。

計画段階:10月1日(火)~5日(土)

ちゃんMが10月5日(土)に福島のコットン畑でボランティアをしているということもあり、当初は6日(日)、7日(月)の二日間で尾瀬あたりに行く予定でした。ところが、10月1日(火)の時点で7日(月)の天気がどこもかしこも絶望的。6日(日)は天気が持ちそうだったので、この日に日帰りで行けてなおかつせっかくなら全員行ったことのない山ということで、御嶽山について調べ始めます。翌10月2日(水)。御嶽山登山が現実的になってきたので、ヘルメットを持っていないちゃんMのためにクライミング仲間Oさんよりヘルメットを拝借。※御嶽山ではヘルメットの装備が推奨されています。

Oさんヘルメット
Oさんありがとうございました。

10月4日(金)の時点でほぼ御嶽山に決定。10月5日(土)午後の最終確認の時点で登山当日の6日(日)に晴れているのはほぼ御嶽山のみという状況だったため、御嶽山登山の敢行が決定しました。脚に深刻なダメージを負った平ヶ岳登山からわずか1週間後だったものの、3人揃って山に登れるタイミングもなかなかないので回復していることを祈りながらの参加です。

登山前日:10月5日(土)

登山当日の出発では色々と不都合が多いので、前夜発です。この日福島でボランティアをしているちゃんMは、福島から東京駅に戻った足で銭湯に立ち寄りそのまま俺の最寄の駅まで来るという強行軍。実に頼もしい女子大生です。そんな俺はというと会社で大モメ。とはいえなんとしても計画通りに山に向かうため、無理やりにでも定時に会社を出ます。I氏はというと昼は筑波宇宙センターで開催されていた特別公開に参加していたのだとか。

それぞれの一日を過ごした3人は、無事俺の最寄の駅で22時前に合流。水や翌日の朝食などを買い込んだ後、御嶽山方面に向かってすぐに移動開始です。伊那ICまで移動し、降りてすぐのGSでガソリン補給。時刻は深夜0時40分です。この周辺は道の駅がたくさんあり、その中でこの日選んだのは『道の駅・木曽福島』。より御嶽山の登山口に近い『三岳』という道の駅もあったものの、規模などを考慮して木曽福島の道の駅を選びましたが結果的にはおそらく三岳の方が良かったものと思われます。

それにしてもこの日のちゃんMの移動距離はすさまじい。東京→福島→東京→長野。この子はどこを目指しているのだろうか。

蛇足ですが、今試しに伊那ICから木曽福島の道の駅へのルートを検索してみたところ、何故か迂回ルートしか出てこない。

迂回ルート

調べてみたところ、最短ルートである361号線はトンネルの入り口付近の土砂崩落により2019年10月20日以降11月20日現在に至るまで通行止めになっているらしい。

土砂崩落箇所
赤丸で囲ったあたりで土砂崩落が起きた模様です。

台風19号で地盤が緩んだせいだと見られているらしく、日本各地の至るところで台風の爪あとが見られます。

閑話休題、道の駅・木曽福島です。3人それぞれ寝る準備を済ませて、就寝…したいのですが、車の音がやかましくて全然寝付けない。ここは国道19号に面しており朝まで車の往来が非常に激しい。道の駅は建物が道路から多少離れた場所にあることが多いので、車の音は計算外でした。なんとか眠りに着いたと思いきや…

登山当日:10月6日(日)

おそらく4時台に30~40代くらいのいい大人4人組が車の外でやかましく話している。道の駅で車中泊すること自体がややグレーなので表立って文句は言えないものの、常識的に考えて朝4時に外でやかましく話すのはいかがなものかと思う。おかげ(?)で目が覚めたので、すぐに登山口に向けて出発。今回は『中の湯』という場所にある登山口からのピストン登山です。当初はロープウェイの使用も考えていましたが、中の湯の登山口はロープウェイの中間あたりに位置しておりロープウェイを使うまでもなさそうだったので徒歩のみとしました。

駐車場に至る道沿いには大量の石碑がありました。本当にすさまじい量なので何事かと調べてみると、なんでも御嶽信仰では「’御嶽に生まれ御嶽にかえる’との考えから、御嶽のふもとに霊神碑を建てて先祖の霊を慰める」らしく、信仰の一環としての石碑郡だったようです。夜中にこの道を通っていたらかなり怖かったのでは…。

登山口への道はあまり車も多くなかったことから駐車場はあまり混んでいないと予測していたのですが、この予測は見事に外れます。朝6時くらいの時点で既に駐車場は満車。路駐以外に選択肢はありません。駐車場から少し下ったところに駐車します。準備をして、6時15分に登山開始です。計画では7時半くらいに登り始めようと考えていたので1時間以上の前倒しです。駐車場脇を進むと登山口が現れます。

登山口

登山口のある場所は6合目。ここから8合目の女人堂に至るまでは樹林帯の中を進みます。

後続の2人
I氏撮影。

平ヶ岳のダメージが結構残っており、登りの時点で既に右膝が少し痛い。前日雨が降っていたのか、登山道が湿っており歩きにくさを感じました。10月に入っている上に3,000m峰なので寒いのではと思いきや、アンダーレイヤー+半袖でも十分なギリギリ夏山と呼べる気候でした。7合目までの間には八海山支店という建物があり、少しだけ休憩。そこから10分程度歩くと行場山荘という山小屋に到着します。

7合目到着
07:00ジャストくらいに撮影。

行場山荘が御嶽山の7合目。ロープウェイではここまで歩いて10分の距離まで上がってこられます。この山行はネットで取得できるコースタイムとGPSアプリの地図を基に行動計画を立てており、中の湯から行場山荘まではコースタイムが出ていませんでしたがこの3人なら40分くらいと読んでいました。結果40分程度で到着しているので読み的中、さらにロープウェイもなしにして正解です。この日は快晴で絶好の登山日和。御嶽山に来て大正解です。

綺麗な黄色
標高を上げるにつれ紅葉もちらほら。

中央アルプス?
徐々に背後に展望が開けてきました。見えている山脈は中央アルプスか。

ここから8合目までがやや急登だったと記憶しています。そして歩くこと約40分。8合目の女人堂に到着し視界が一気に開けます。乗鞍岳がばっちり見えており、乗鞍岳山頂から御嶽山を見ていたのをI氏と思い出していました。

女人堂到着

見事な雲海
背後には雲海。

雲上の山
雲から突き抜けている山は乗鞍岳。

このあたりから紅葉がかなり綺麗でした。音で言うと『ポンッポンッ』って感じで紅葉の塊が点在しているような印象です。

見事な紅葉
紅葉がばっちりです!

カメレオン
風景と同化している俺。

振り返ればそこは
少し標高を上げて振り返った図。

女人堂にいた時点では山頂あたりは雲に覆われており少し不安でしたが、少し登ると雲が流れ山頂が見え始めました。

笑顔のちゃんM
ちゃんMと言えば0.1秒スマイル。

THEカメラマン
8時10分くらいに撮影。山頂までまだ少し距離があります。

徐々に岩がちの道へと変貌し、富士山の登山道のようになっていきます。この辺に転がっている岩も2014年に降ってきたものなのだろうか、と思うと空恐ろしい。

富士山のような道

この時点でも結構人はいますが、パーティごとの間隔はそれなりに空いており渋滞と言うほどではありませんでした。山頂あたりはガスったり晴れたりを繰り返します。それだけ強風が吹いているということであろうと予測していました。登山道にはところどころ残りの距離を示す石柱が打ち込まれていましたが、どうもざっくりだった気がしてならない(ちゃんM談)。

あまり当てにならない?

山頂に近づくといよいよ富士山めいてきます。森林限界を完全に超え岩の世界になります。

森林限界突破

山頂に至る道の右手に見えてくるのが二ノ池ですが、この池は「日本で一番高いところにある池」らしく、以前は『絵に描いたような美しいコバルトブルーが特徴』だったそうなのですが2014年の噴火以降は火山灰が流入してコバルトブルーだったころの池の面影は一切残していませんでした。

往年の姿は今どこに
かつての面影を残さない二ノ池。

さらに先に進むと、山頂直下に『避難壕』が現れます。

避難壕

御嶽山に行く前、登っている最中、そして下山後から今に至るまで「いつ噴火するか分からない山に登る意味」みたいなことを漠然と考え続けていますが、これといった考えがまとまることなくいつも思考は分散していきます。ちょうどこの避難壕を製造、納入した業者の方の記事を見つけたので一部抜粋して紹介したいと思います。

御嶽山はとても雄大できれいな山ですので、来年(=2019年)も規制解除されればまた多くの登山者が戻ってくると思います。その一方、工事で御嶽山に何度も登ったのですが、戦後最大となった噴火災害の痕跡が随所に残っていました。人が火山とどう向き合うか考えさせられます。
https://www.precast-takamisawa.com/blog/2018/11/20181119.php

山の中は生と死が混在する、日常生活から切り離された”異世界”だと時折考えます。山には噴火以外にも熊や滑落、道迷い、落雷、熱中症、低体温症など多種多様な危険が潜んでおり、活火山でなくとも山は本質的に死と隣り合わせの場所だと思います。この意味では、山の上から街を見下ろして『下界』と称するのは言い得て妙かもしれません。こういった危険から自分で自分の命を確実に守りながら山頂に至り下山する登山という行為は日常生活では考えられないほど『生きる』ことを意識させ、また『生きている』ことを実感させます。今以上に”生きる”ため。これが活火山を含めた山に登る自分なりの意味のひとつであり、何故わざわざ危険と分かっている山に入るのかという問いに対しての自分なりの答えのひとつです。

慰霊碑1

慰霊碑2

亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。

※※※

上の避難壕の写真にも写りこんでいますが、すぐ近くに山頂への階段があります。

階段の先は

この階段を上がればすぐに山頂です。

三名とも無事登頂
時刻は9時10分。無事3人で登頂しました。

山頂とはいえほかの山のように和やかな雰囲気ではなく、2014年の噴火があったからかもしれませんが殺伐とした印象を受けました。

荒涼

またほかの山にはあまりない、こんな看板も見かけました。

珍しい注意書き

この注意に則り、あまり長い時間滞在せずにすぐに下山を開始しました。下山途中、二ノ池に立ち寄ります。上の写真でも載せたように、往時はコバルトブルーだったこの池も今は火山灰に覆われています。

二ノ池の今
往時はどのような光景だったのか。今では想像することしかできません。

面影
わずかに残る水面。

二ノ池に立ち寄ったらいよいよ本格的な下山です。登りはそこまで混雑していませんでしたが、下山時は登ってくる人が大量で大混雑。道を譲るのも大変、追い抜くのも大変でとにかく人が多くて疲れる下山となりました。

ここまであまり食事を摂らずに来ていたので3人ともかなり空腹。女人堂の手前で食事休憩です。登山前日に筑波宇宙センターで開催されていた特別公開に参加していたI氏が「少しでも宇宙に近いところで食べる」という理由で宇宙センターで購入した『宇宙食』レアチーズケーキをここまで担ぎ上げており、早速3人で試してみました。結構肌寒くなってきていたのでちゃんMが防寒(忍者)仕様です。

忍者?
I氏「なんだこいつは」

フリーズドライ製法で水分を取っ払ったスナック菓子みたいな状態になったレアチーズケーキは、味は(当たり前ですが)レアチーズケーキそのもの。サクサクしているのに味がレアチーズケーキという不思議な食べ物でした。

食事後は下山続行。8合目を過ぎ樹林帯に入ると、湿った登山道が非常に滑るのでおそるおそる進行します。登りの際には立ち寄らなかったロープウェイの駅に立ち寄りつつ、ロープウェイには乗らずに登山道に戻り徒歩で下山続行。結構脚が疲れていたので3人ともロープウェイに乗る誘惑はありましたが「なんか負けた気がする」のでもちろん使用しません。そしてここからの最後の1時間が長かった!快調ではないひざがズキズキと痛み始めており、この脚にはちょうどいい内容の山行だったように思います。

「牧場でソフトクリーム食べたい」を連呼するちゃんMを適当にあしらいながら13時15分下山。6時15分に開始したのでなんだかんだ7時間くらいの行動時間となりました。ちゃんM曰く「南アルプスよりきつくなかった」とのこと。今後のさらなる飛躍に期待です。

ログ

このときのログ。12km近く歩いており距離も累計標高も南アルプスのときの一日あたりの行動内容以上なのにもかかわらず、今回のほうが楽だったと言うちゃんMはさすがのサーファースキーフラヨガ女子大生です。

さて、下山したら早速向かうのは温泉です。少し調べて、向かったのは『やまゆり荘』という日帰り温泉施設。

やまゆり荘
http://www.yamayuriso.jp/

正直、10月6日以降日帰り温泉施設に行き過ぎてやまゆり荘の泉質やらをまったく覚えていないのですが(すみません)、受付の神対応は非常に良く覚えています。ちゃんMのソフトクリーム熱が伝播してきたので「とりあえず聞いてみるか」ぐらいの気持ちで受付で聞いてみたところ、「それなら」とすぐ近くの牧場とアイスクリーム屋さんをすぐに教えてくださいました。牧場もアイスクリーム屋さんもどうやら有名な観光スポットだったようです。まさかこんなすぐ近くにあるとは思わず驚愕。昼食で予定していたそばについては「どの蕎麦屋も美味しい」とのことだったので、『アイスクリーム屋さんに向かいながら道中見つけた美味しそうな蕎麦屋に入る』という行動計画をまとめ早速出発進行です。そして道中見つけた蕎麦屋が『そば処 まつば』でした。

そば処 まつば(食べログ)
https://tabelog.com/nagano/A2007/A200701/20007976/

そば処まつば

この日は近くで各蕎麦屋さんが参加しているそば祭りが開催されており、祭り自体はちょうど終了(15:00)したばかりでしたがこの祭りのおかげで

蕎麦onセール

ざるそば1枚500円

素晴らしすぎる!!通常価格の半額くらいです。もちろんざるそばを注文します。

これで500円!

そしてこのざるそばが美味すぎる。きし麺のような平たい麺で食感が良く、あっさりした味付けのつゆに絶妙に合う。鼻を通り抜けていく蕎麦の風味がたまりません。自分史上暫定ナンバーワンのざるそばとなりました。あまりにも美味しい上に500円なので3人とも(ちゃんMも)2枚目も注文。大満足です。ざるそばのあとに向かったのはやまゆり荘で紹介された『開田高原アイスクリーム工房』。すぐ近くにありました。

開田高原アイスクリーム工房(食べログ)
https://tabelog.com/nagano/A2007/A200701/20000608/

ここがまた来て大正解のお店。車が大量に停まっておりそれなりに混雑していましたが、そこまで待たずにソフトクリームにたどり着きました。

パジャマ?
最後尾がI氏とちゃんM。もはや服装が真夏。

激ウマ!ソフトクリーム

バニラととうもろこしのミックスを、ワッフルコーンで注文。ちゃんM、山では適当にあしらってごめんなさい。山→温泉→蕎麦、からの〆のソフトクリームは最高でした。ソフトクリームを食べたことと日が傾いてきたことで結構寒くなってきたので、車に避難。この時点で時刻は16時。いい時間になりました。3人とも「帰りたくない病」を発症し後ろ髪を思いっきり引かれながら帰路に就きます。

高速を移動中、「自分のためにしかお金を使わない人間は、心が狭く結果的にモテないのではないか」論を3人で議論し盛り上がる。妙に心に刺さったらしいI氏は果たして太平洋のように広い心を獲得することができるのだろうか。

※※※

そんなことをワイワイ話しながら、21時過ぎに埼玉の某駅に到着。二人を降ろして自宅に向かい始めたところ、すぐにI氏から連絡が入る。

「ちゃんMが車に財布とスマホ忘れたらしいです」

ちゃんMはどうやって帰るつもりだったのだろうか。そんなこともありつつ、3人の珍道中は無事終了。今まで一人旅ばかりしてきた俺と共に山に行くようになったI氏に、最近加わったちゃんM。この2人には仲間と旅するのも楽しいと気づかせてもらいました。御嶽山から約1ヶ月後に同じ3人で燕岳に登ることとなりますが、この山行もまた思い出に残る素晴らしい内容となります。

ギリギリ夏山程度の装備で行ける季節はこのときの御嶽山で終了し、次回以降は秋・冬山編となります。燕岳の山行記録の前に、10月末~11月初旬にかけて日本各地を一人駆け巡った『充電の旅編』を執筆予定です。

2019年の山はまだまだ終わらない。

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