遡ること2ヶ月半───。ブログの時系列がめちゃくちゃですが、今回は今年3月末に登った妙義山のレポートを書きたいと思います。職場でI氏と「この時期でも登れる山はないか」という話を年始にしていたのが事の発端で、その際にふと妙義山のことが頭によぎり調べ始めたのでした。妙義山は一般登山道の中でも屈指の難易度で有名で、クライミング仲間ともちょくちょく話題に上る山でいつか行きたいと思っていた山のひとつでした。
2月24日(日)。2014年11月に行った西上州の山の地図を広げてみると、実はほぼ全面妙義山の地図であったことにいまさらながら気づく。そこで初めてほぼすべての登山道が破線の、難所で危険箇所だらけの山だということを知ります。同じ週末にいろいろと調べ、妙義山について以下の知識を得ました:
- 妙義山には表妙義と裏妙義があり、表と裏の差は難易度ではなく場所の差;
- 全体を通すと表妙義のほうが難易度が高いが、裏妙義の『丁須ノ頭』が妙義山の中で最難箇所;
- 表妙義も裏妙義も日帰り縦走可能;
I氏との何度かにわたる作戦会議の結果、表妙義に行くことに決定。日程は3月25日(月)。予定の一週間前に天気を確認したところ快晴予報だったので決行することになり、細かい行動計画も作成。『いつか』の妙義山がいよいよ目前です。そして妙義山は4月から新社会人となるI氏の卒業登山でもあるのでした。さまざまな思いを乗せたこの登山。まずは恒例のメンバー紹介から始めたいと思います。
チーム紹介
それでは妙義山のレポートを開始したいと思います。
登山前日、3月24日(日)
14時にI氏宅で氏をピックアップ、そのまま山へ…向かうのではなく、向かったのは入間にあるクライミングジムBase Camp。この日はクライミングをしてから登山口付近に向かう予定でした。15:50ジム着、仲間に連絡したチャットを見返してみるとすごい混んでいたようです。この日は実に調子が良く、数年振りにリードのグレードを更新。ようやく5.11b突入です。他に5.11a二本オンサイト、ボルダーで2級も落とすなど、本当に調子が良かったようです。翌日動けるのか。
クライミング後はイオン入間店に寄り食材を買い込み、その後20時に入間の吉野家で夕食を済ませたらようやく妙義山方面へ。妙義山周辺にはいくつか道の駅がありますが、登山口近くの道の駅は寒いのではという疑惑があったので、向かったのは登山口の少し手前にある道の駅・しもにた。駐車場は空いており、翌日に備えてすぐ就寝です。
登山当日、3月25日(日)
ついに当日です。この日は朝一で行動を開始するべく、5時起床。すぐ出発です。
地図を見ると登山口のすぐ近くに道の駅・みょうぎがありますが、近づいてみるとその少し手前に登山者用の駐車場がありました。登山口付近がどんな様子か見ておきたかったので、登山者用の駐車場に停める前にまずは道の駅まで行ってみました。時刻はまだ6時前。ちょうど季節だったのか梅(だと思われる)の花が咲き乱れており、日の出も相まってかなり幻想的な雰囲気でした。
この時点でダウンジャケットを着るくらい寒いです。そして道の駅の目の前にはこれから登る妙義山が!
1,000mちょいの山ですが圧倒的存在感です。山の中腹には大きな『大』の文字も見えています。
縦横5mの大の字、上の写真の妙義山の中心にあります。妙義山の麓には妙義神社という神社があり、この大の字は『妙義大権現』の大からとったのだとか。妙義神社にお参り出来ない人のため江戸時代に建立されたそうです(江戸時代!)。写真の大の字は鉄製ですが当時はワラを巻いたものだったそうです。この日御朱印帳を忘れたのは痛恨のミスでした。
梅(?)と景色を堪能したら出発に向けて準備です。登山者用の駐車場に移動し、朝食を食べて支度が済んだら妙義山に向けて出発。この日は普段の登山装備に加えてクライミング用のハーネスとセルフビレイ用の装備、さらにヘルメットも装着しての登山。万一に備えての準備です。登山開始時刻は6時22分でした。
車は一台も停まっておらず、人気がほとんどなかったのを覚えています。表妙義は大きく分けて表妙義最高峰の相馬岳を含む『白雲山』と、鷹戻しの頭や中ノ岳などを含む『金洞山』に分けられます。白雲山、金洞山でちょうど今回の山行も二分されているので、ここからは前後編に分けてお送りしたいと思います。
前半: 白雲山編
まずは登山口のある妙義神社に向かいます。駐車場から歩き出して10分も経たないうちに鳥居に到着、そのまま境内に入ります。I氏が手袋までしているあたりこの時間帯の寒さが写真からもうかがえます。
白雲山の難所は神社を過ぎて奥の院に至ったあたりから天狗岩あたりまでです。この先の内容は以下の地図(1)を基に書いていきます。
出発早々、二人はやらかしてしまいました。地図(1)の中で、『白雲山登山口』と書かれている分岐点を右に行くはずが誤って左に進んでしまい、大の字を経由して奥の院に向かう予定が第一見晴を経由して早速破線ルートに入って奥の院に向かうこととなってしまいました。特に問題はありませんが、予定よりも破線ルートに入るタイミングが早まりました。
歩き出してすぐに汗が噴き出してきたので、早速軽装になります。『辻』という分岐点に至るまでの破線ルートは破線とはいえたいしたことのない道だったので、この時点ではまだヘルメットは装着していません。辻には7:25くらいに到着。ここで初めてヘルメットを装着しました。
辻の分岐点。矢印の左から来ており、右に抜けていきます。もともとのプランでは大と書かれているほうからきて右に抜けるはずでした。ここからいよいよ本格的な妙義山登山が始まります。まず向かったのは奥の院。辻の分岐からすぐ近くにありました。
奥の院をそのまま奥に進むのかと思いきや、少し戻って奥の院の右側の壁面を登っていきます。早速鎖場です。
地図(1)で『ルンゼ内直立4連30m鎖』と書かれている箇所です。高度感はありましたがここはまだ序の口です。ここを突破するとまた鎖場が現れます。
地図(1)で『7m外傾鎖』と書かれている箇所です。気軽に↑と矢印が描かれていますが、ほぼ垂直です。とはいえここもさほど難しくありません。この鎖場を越えると地図にも見晴と書かれている見晴らしの良い場所に出ました。
2枚目の写真、はるか遠くに雪をかぶっているのは谷川連峰のようです。山座同定にあたっては以下のページが非常に参考になりました。
http://hirasan.canada2194.com/uramyougipa.jpg
https://msp-j.tumblr.com/image/183719604574
こちらも見晴から見た景色。奥の雪化粧している山は浅間山。浅間山手前の岩峰群が裏妙義です。北アルプスのジャンダルムみたいな岩が烏帽子岩、その右が赤岩、さらに右のほうに丁須ノ頭が見えていました。丁須ノ頭はズームするとかろうじて上の写真の中でも認識できます。
小さすぎて何がなんだかですが、このTの字の岩が妙義山全体でもっとも危険といわれている箇所となります。見晴に10分くらい滞在し、先に進みます。岩の間を抜けると…
名前からしておっかないのですが、ビビリ岩の突破は結構緊張しました。鎖もあるしフットホールドも悪くはないのですが、なにしろ崖を横切っているようなものなので「もし手を離したら」という想像をすると背筋が凍ります。この辺から同時ではなく一人が突破したらもう一人、というように順番に進んでいくことにしました。
上の写真はビビリ岩の途中だと思いますが、より怖い場所もありました。が、怖い場所は怖すぎて写真を撮っている余裕がなく手元に写真が残っていません。この先もそんな場所がひっきりなしに登場し、本当に危ない場所は写真など悠長にとっている余裕はありませんでした。地図には載っていませんが、ビビリ岩の次には『背ビレ岩』という名称の岩場が登場します。
背ビレ岩は見た目ほど怖くはなく、垂直の壁面を昇降したりトラバースしたりという箇所のほうが怖いです。
ビビリ岩:難度 ★★★☆☆
背ビレ岩から5分程度で地図(1)の『大のぞき』に到着。
大のぞきから見た『天狗岩』。大のぞきその場所自体は見晴らしの良い場所なのですが…
いきなり50mくらい一気に下ります。上の写真は大のぞきからの下り其の一『滑り台状2本10m鎖』。そして…
個人的な印象としては白雲山最難箇所はここです。ネットで調べてみてもこの場所はどうやら有名らしく、似たアングルの写真も良く出てきます。高さがあることに加えて、朝一だったこともあり陽に当たっていない鎖が
手がカチコチに凍りつきました。
滑り台状30m鎖:難度 ★★★★☆
ここから地図上の次のポイントである天狗岩まではあまり遠くありません。
そして9時過ぎ、表妙義最高峰の相馬岳の山頂に立ちます。
日々野鮎美得意のおにぎりポーズ、でも彼女は多分ここには来ない。遠方には裏妙義と浅間山。
別の角度を撮影した写真。中央に屹立している3つの山のうち、この日の目的地は一番左の中ノ岳。まだ先は長いです。中央の西岳、右の星穴岳は登山禁止。遠方の真っ平らな異様な山容の山は荒船山というどうやら有名な山らしい。そのさらに奥に雪をかぶっているのは八ヶ岳のようです。
相馬岳を越えると標高を一気に下げ、白雲山と金洞山をつなぐ『茨尾根』に入ります。標高を下げきったあたりで登り返し始める前に昼食休憩です。緊張を強いる箇所が多かったので結構疲れていましたが、まだまだ先は長い。
10時前から30分程度昼食休憩。このグッズはすべてI氏のものです。山で飲む甘酒は予想以上に旨かった。そして日々野鮎美に癒されます。白雲山にお別れを告げ、迎え撃つは金洞山です。
後半: 金洞山編
金洞山の難所は以下の地図(2)の破線ルート全体です。
特に難しいと感じたのは:
- 鷹戻しの頭への登り:難度 ★★★★★
- 鷹戻しの頭の先の下り:難度 ★★★★☆
- 中ノ岳から主稜のコルへのルーファイ:難度 ?????
あたりでしょうか。それでは金洞山編を書いていきます。
上の地図の範囲内ではありませんが、まずおっかなかったのは『おわん内壁のような鎖トラバース』と地図に書かれている箇所です。
どのへんがおわん内壁なのかはいまいち分かりませんでしたが、おっかなポイントは
という点。写真だと分かりづらいのですが、I氏の右上あたりの壁面が凍り付いており靴のフリクションがまったく効きません。手を離せば山の斜面を転がり落ちていく場所なので数歩とはいえ結構緊張しました。そしてその後現れるのが
という、鷹戻しの頭への登りです。垂壁にアルミ?のハシゴが何段か取り付けられており、その後鎖場が現れるのですが、まずハシゴがなんとも頼りない。「このハシゴが壁面から外れたらアウト」ということをなるべく考えないように早く突破し、鎖場に移行です。鎖場はそこまで難しくはないのですが、とにかく
果てしない鷹戻しの頭への登りの中で何箇所かテラスのような場所がありセルフビレイをとって休もうと思えば休めました。結果的に休憩せず一気に突破しましたが、セルフビレイをとれるようハーネスやカラビナなど装備していたことはかなり心の支えになりました。I氏も「セルフとろうか本気で迷った」と後日証言しているようにとにかく長いんです。多少はクライミングをやったことのある人でないと突破は難しいように思いました。両手を離したら即アウトの場所が続いたので写真は撮っていません。
鷹戻しの頭への登り:難度 ★★★★★
鷹戻しの頭にたどり着くとようやく目的の中ノ岳が目の前です。
とはいえ、まだまだ難所は終わりません。次に登場するのは『ルンゼ内二段25mの鎖』です。
ルンゼへの出だしです。ここから25m下ります。
25mのルンゼ降下中のI氏。さてどう下ろうかと思案中。下から見上げてみるよりも、上から下るときのほうが足元が見えずおっかないです。間違いなく難所のひとつとして数えてよいと思います。
鷹戻しの頭の先の下り:難度 ★★★★☆
そのまま進むと金洞山の東岳に到着しますが、山頂標識がないのでそのときはそこにいるとまったく気づきませんでした。
おそらく東岳から撮った写真其の一。眼下には大砲岩などが見えていたらしいもののこのときはまったく意識せず。
おそらく東岳から撮った写真其の二。奥に見えるのが相馬岳を最高峰とする白雲山。見えづらいのですが白雲山に重なってその手前にあるのが今しがた越えてきた鷹戻しの頭。撮影時刻は12:20くらい。登山開始からすでに6時間程度経過しています。
妙義山登山も終盤。そのまま中ノ岳に進みます。15分程度でこの日最後のピークとなる中ノ岳に到着。ただ、中ノ岳にも中ノ岳という山頂標識がなく、これがのちのルーファイに影響を及ぼします。
中ノ岳にて撮影。満面の笑みではありますがお互いかなり疲弊していました(体力というよりも精神的に)。中ノ岳からはいきなり二段15m鎖場の下りが登場します。
この写真、ぱっと見では高度感が分かりづらいのですが
このように見えないくらい先まで鎖が続いています。
さてあとは下山するのみ…と思っていたのですが、ここで道迷い事件が発生します。上の鎖場を下りきると、道は右の谷に下るザレ場か、もしくは半分ヤブと化した直線的ルートに分かれていました。下の当該の箇所をアップにした地図にもあるとおり最終的には進行方向から見て左に巻いて下山しているので、直線的ルートから左に逸れるのだろうと思いまっすぐ進んでみたものの、その先には小さな祠があるのみで行き止まり。分岐に戻る道程で別の道を探してみたもののどうしても見当たらないので、もとの分岐を右の谷に下りてみると、そのまま山を左方向に大きく旋回して結果的にもともと想定していたルートに合流したのでした。
道迷いに至った原因としては、まず赤と青で丸印をつけたうちどちらが中ノ岳か分かりづらい。赤丸だと思い込んでいたのですが結果的には青丸のほうが中ノ岳だったようです。そして破線の描写が右に移動してから左に旋回するように描かれていない!もちろん地図に文句は言いませんが、より深く地図を観察することや線の描かれ方ではなく目の前の状況で判断することが重要であると改めて思った山行となりました。ちょっとした鎖場を通過したらようやく破線ルートが終わり一般ルートに合流します。
熟達者向歩道(岩登り)という表記が謎過ぎる看板です。これで危険箇所は終わったのですが、駐車場まで戻るのはまだ少し先です。破線ルートは一周して駐車場のほうに戻るのではなく直線的に西のほうへ進んだだけなので、同じ距離を東に歩いて戻らなくてはいけません。上の看板にあるとおり現在位置は中之岳神社の近くですが、車が置いてあるのは妙義神社の近くです。同じく看板上の緑の道を延々と歩くことになります。じっとしていても戻れないので疲れた身体に鞭打って動き続けます。まずは『第四石門』をくぐるところから長い長い帰還の旅路が始まります(BGMは宇宙戦艦ヤマト)。
妙義神社までのコースタイムは2時間半、この時点での時刻は13:25です。単調な遊歩道と思ってなめていたら結構アップダウンの激しい道で、疲れた身体にかなり堪えました。
体力気力ともに限界に近づいていた中、15:15くらいに妙義神社に到着し、15時半までに駐車場に戻ってきました。約9時間の久々の長時間行動となりました。ここまで長い行動時間はパッと思い出せる限りは昨年の八ヶ岳以来かもしれません。結果的に破線ルート上は誰ともすれ違わず、戻った駐車場にも一台も車がなかったので我々しか入っていなかったようです。怪我なく終えることができて何よりです。
このときのログです。最高高度が相馬岳の1,104mであるのに対して累計高度(+)が1,336m、累計高度(-)が1,361m!アップダウンの激しさを物語っています。大峯奥駈道を思い出します。
下山後は恒例の温泉です。調べたところ『妙義ふれあいプラザ もみじの湯』が安くて景色が良さそうだったのですがあいにく月曜休みだったので、次点で選んだ妙義グリーンホテルへ向かいました。ゴルフをやっている風のおっさんがたくさんいた記憶があります。風呂から妙義山を一望できましたがI氏は「当分見なくていいです」とかなんとか。鎖も当面見たくないと言っていましたがもう回復したのだろうか。裏妙義が待っていますよ。
風呂上がりにフルーツ牛乳を飲みながら、夕食の検討です。この辺に観光で訪れたことがあるというI氏曰くこんにゃくパークが有名とのことでしたが、最終受付時間に間に合いそうにありませんでした。下仁田はカツ丼がご当地グルメということで、こちらも以前I氏が訪れたことがあるという下仁田駅前の『れすとらんヒロ』に行くことにしました。グリーンホテルかられすとらんヒロは距離にして13kmなので車ならすぐです。
れすとらんヒロ(食べログ)
https://tabelog.com/gunma/A1005/A100501/10005069/
着いたころにはすでにあたりは薄暗くなってきていました。曜日や時間帯が中途半端だったからか店内は空いていました。800円で味噌汁、お新香、こんにゃくが付いてくるという『下仁田かつ丼』をチョイス。出てきたのがこちらです。
肉厚なのに柔らかい!心身ともにくたくただった我々の五臓六腑に染み渡る美味しさでした。I氏がスタンプカードを受け取っていたと記憶しています。御朱印やれすとらんヒロ再訪のため、I氏を連れ立って裏妙義に行く日も近いかもしれません。
年末年始の丹沢をカウントしない場合、2019年初登山はこの妙義山でした。1月、2月と山に行っていない中のハードルートは準備運動をしないまま全力疾走したようなものでかなり疲弊しましたが、『最も難しい一般登山道はどこか』論争で必ず候補に挙がる妙義山をやったというのは大きな自信につながりました。
2019年はこの妙義山の次が先月の九州の山々。例年に比べて登山開始時期も早ければペースも速く、今年も充実した山ライフを過ごせそうです。
2019年の山旅はまだまだ続く→
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