69座目の百名山: 仙丈ヶ岳

THE仙丈ヶ岳
南アルプスの女王、仙丈ヶ岳。小仙丈ヶ岳から撮影。

去る10月24日。この日は自分にとってはある節目の日であり、翌10月25日からはいろんな意味で新しい旅が始まりました。一時的に風邪でダウンしたものの復活し今は岩手県は一関市にあるスターバックスに来ています。未完の夏山登山記録を完成に近づけるために。





今は昔、お盆の山旅が終了してから10日後の8月24日(土)夜───

再び山に行くべく俺とI氏、さらには新たに加わったサーファースキーフラヨガ女子大生『ちゃんM』の3人は俺の最寄の駅で集まり登山に向けて準備をしていたのでした。このときの山旅は『南アルプス編』。数年来行こうとして一歩を踏み出せずにいた山域・南アルプスに足を踏み入れた自分の中では記念すべき山行のひとつです。当時を振り返る前に、まずは恒例のメンバー紹介を行いたいと思います。

チーム紹介

筆者「俺」。入ったことのない山の登山口に立つあの瞬間の高揚感が大好きです。南アルプスは山域自体が初めてだったのでいつも以上にワクワクしていました。
山仲間「I」。今読んでいる本は笹本稜平の『還るべき場所』。山岳小説に登場する多くの人物と同じように山に魅入られた人。これからもまだ見ぬ多くの山を登ることでしょう。
新たなる仲間「ちゃんM」。冒頭に書いたとおりサーファー兼スキーヤーでフラもやりヨガが趣味のスーパー女子大生。おそらく1週間くらい寝なくてもケロッとしていそうなパワフル女子です。

新たなメンバーを加えた南アルプス編。そもそもの発端は、お盆の旅よりもさらに前の8月6日にI氏が突然「8月25日に御嶽山に行きたい」と言い出したことから始まります。そこからさまざまな会話があり、お盆の旅を終えたあたりから『8月25日前後の山旅(場所未定)』について本格的に検討を始めることになります。

8月20日の時点では燕岳か仙丈ヶ岳で検討しており、この時点では予報の良かった仙丈ヶ岳で計画を立てています。この時期も天気が安定しておらず、さらにI氏の体調まで安定しないというハプニングが起き実施が危ぶまれました。仙丈ヶ岳の計画を立てた翌8月21日に南アルプスの天気が悪化したので八ヶ岳か安達太良山で再検討、さらに8月23日には北アルプス案が出るなどなかなか行き先が定まりません。

出発当日の8月24日朝の時点では北アルプス案が濃厚だったものの、昼の時点で最終確認した天気予報を見て初志貫徹南アルプス案を決行することに決定。これには大いに『今年こそ南アルプスに行きたい』という俺の意思が介在しているわけですが、結果オーライということで二人とも許してください。

こんな経緯があっての、前泊入れて2泊3日南アルプスの旅の始まりです。

旅前夜:8月24日(土)

I氏とちゃんMに俺の最寄の駅まで来てもらい、まずは食料(+酒)の買出しです。俺はその間に例のごとくトンカツ屋でカーボローディングです。最終的には3人合流し各種必要なものを買い揃え、車を拾って出発です。

この旅の目的は1泊2日で仙丈ヶ岳と甲斐駒ヶ岳の二座に登ること。この時期の『山と食欲と私』の連載がちょうどこの山々だったという事情に加えて天気との相談の結果、南アルプスの中でも登りやすいとされるこれらの山々に登ることになったのでした。両方の山への登山口が位置する『北沢峠』にベースキャンプを張り、一日一山登るという計画です。ちょうど登山道が8の字を描くようになっており、8の線の交差する地点に北沢峠、8の上端と下端に甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳の頂上がそれぞれ位置しているようなイメージです。北沢峠は一大登山拠点であるのに加えて、長野県(伊那市)と山梨県(南アルプス市)の県境でもあります。北沢峠へは舗装された道路が通じていますが、マイカー規制が敷かれておりマイカーでアクセス可能なのは北沢峠から1時間ほど長野県側に戻った場所にある『仙流荘』という宿泊施設。仙流荘には登山者用のかなり広い駐車場も用意されており、この日はこの仙流荘を目指します。

近所のGSで給油したのが21時50分あたり。高速を飛ばし伊那ICで降りてこの日の目的地である仙流荘に着いたのが記憶では午前1時過ぎから1時半の間くらいでした。かなり車が停まっている印象でしたが、明るくなってから確認したところさらに奥にも広い駐車がありました。翌朝は5時半(もちろん午前)のバスに乗るため、4時台起床です。

登山初日:8月25日(土)

無事3人とも4時台に起床。さすが南アルプスの中でも特に人気の山域への入り口だけあって、こんな山奥の朝一でもすごい人混みです。この時間ですでにバスのチケットを買うための長い行列ができていました。少し出遅れて列の後ろのほうになってしまいましたが、無事チケットを購入でき始発に乗ることができました。今回はベースキャンプ登山ということでテントと食事、調理道具一式持参だったのですごい荷物の量です。

バスから見えた仙丈ヶ岳山頂周辺には雲がなく、一方の甲斐駒ヶ岳には雲がかかっていたのでこの時点でこの日登る山が決まりました。甲斐駒ヶ岳から続く鋸岳はばっちりと見えており、以前クライミング仲間のNさんが登ってみたいと言っていたのを思い出したりしていました。ちゃんMはバスの中で爆睡でした。

時刻どおり北沢峠に到着。まずは拠点を作るべくテント場のある長衛小屋に歩いて移動し、受付を済ませたら幕営です。

受付中
受付中のI氏。

靴の結び方あれこれ
幕営後、元登山道具店員に靴の結び方を教わるちゃんM。

もろもろの準備が終わり、出発したのは7時10分くらいでした。

目の前には仙丈ヶ岳
目の前には目的の仙丈ヶ岳が!

元気な二人
まだ元気な二人です。

早速登山開始。ちゃんMにとっては初の本格的な登山です。I氏、ちゃんM、俺、の順で歩き始め、これが以降の山行時の定位置となりました。

歩く順

仙丈ヶ岳は最初から急登の山。I氏はいつもの調子でどんどん進みますが、ちゃんMがしょっぱなから悲鳴を上げる。相変わらずの容赦のなさです。

0.1秒で笑顔

バテ顔から0.1秒で笑顔に切り替えるすご技、ちゃんMです。そして登山開始から1時間15分で五合目に到着。

0.1秒で笑(以下略

0.1秒で笑顔に(以下略。1時間15分で到着した五合目ですが、コースタイムは2時間。x0.63くらいのスピードで歩いているあたり登山デビューとは思えないちゃんMです。五合目を過ぎたあたりから、振り返った位置に徐々に甲斐駒ヶ岳が見え始めます。これがとにかく圧巻の一言。この日念願の一眼レフを登山に初投入したI氏の写真で紹介したいと思います。

THE甲斐駒ヶ岳

右にどっしりと構えているのが甲斐駒ヶ岳、稜線を左に移動していくと鋸岳があります。そしてちょうど稜線のくぼんだところから遠方に見えているのはどうやら八ヶ岳だったようです。振り返れば甲斐駒ヶ岳、そして目の前には仙丈ヶ岳手前の小仙丈ヶ岳(名前の付け方)が現れます。

小仙丈ヶ岳
目の前には小仙丈ヶ岳。

背景がすごいの巻
うしろにはちゃんMと俺。I氏視点です。背景が壮大すぎる。

ずっと登りっぱなしの登山道。休憩を挟みながら進みます。

野郎二人。
野郎二人。ちゃんM撮影。

そしてここら辺から一眼レフが能力を遺憾無く発揮し始めます。

テント場の位置1
写真右下の登山道にいる二人の人物はちゃんMと俺です。

上の写真の白矢印のあるあたりに我々のテントが張ってあり、テント場に近づいていくと…

テント場の位置2





テント場の位置3

Σ(゚Д゚;

一眼レフすごすぎです。さて、少し歩くと小仙丈ヶ岳です。仙丈ヶ岳には3つのカールがあることで有名らしく(下山後知りましたが)、ちょうど3つのカールが撮った何枚かの写真に写りこんでいました。

俺とMとハエ

小仙丈ヶ岳にて。ちゃんMと俺、と左のほうにハエ。奥に見えるは一つ目の小仙丈沢カールです。そして小仙丈ヶ岳からはさらに珍しい光景も見られました。

標高トップスリー

写真左奥薄く見えているのが日本の標高ナンバーワンの高さを誇る富士山。写真中央に聳えているのが日本の標高ナンバーツーの北岳。そして北岳から稜線を右にたどり一番高くなっている地点が日本の標高ナンバースリーで間ノ岳。つまりこの写真には日本の標高ベスト3が並んでいるのです!富士山、北岳は気づいていましたが間ノ岳は帰宅してから改めて気づきました。まだ歩いたことの無い「日本一高い稜線」である北岳~間ノ岳間を来年こそは歩いてみたい。

神々しい富士山。
神々しい富士山。

ここからは一旦平坦な道を進み、その後最後の登りを山頂まで登りつめます。

0.1秒で(以下略

0.1秒で(以下略。初の南アルプスということで山頂到着を待てなかった俺は、残り二人に断りを入れここから一人駆け足で山頂まで駆け上がることにしました…が、山あるあるで山頂だと思った位置が山頂ではなく、登山道は山の反対側に周りまだ少しありました。

先はまだある

こちら側の斜面は二つ目の藪沢カールです。

山頂まであとわずか
山頂はあとわずか。

そして到着!初南アルプスの山!!感動はひとしおです。振り返れば歩いてきたながーい道が伸びていました。

振り返れば道

右奥には鳳凰三山も見えていたようです。というより、今地図を見ていて甲斐駒ヶ岳から鳳凰三山は早川尾根という尾根を経由して繋がっているということに気づきました。ということは、南アルプスにある百名山である鳳凰三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、北岳、間ノ岳、塩見岳、荒川岳、赤石岳、聖岳、光岳は全て繋がっているのか…。たまに聞く『南アルプス全山縦走』というのはこのことかと今更ながら気づく。雲取山~瑞牆山を繋げる奥秩父主脈縦走と合わせていつか挑戦してみたい。上の写真、甲斐駒ヶ岳の奥にうっすらと見えている稜線はその奥秩父主脈だと思われます。ブログに「いつか登ってみたい」と書いた山へはだいたい登ってきているので、ここに書くといずれ自分が実現するのではとそんな気がしています。

さて、少しして二人も合流。さっそく標柱の前で記念撮影です。翌日登ることになる山、甲斐駒ヶ岳に雲がかかり始めていたので甲斐駒側でも各々記念撮影しました。遠方に小さく見えているのは仙丈小屋です。

記念撮影!

実に思い出深い初南アルプスとなりました。二人ともありがとう!ちゃんM初登山+初3,000m超えおめでとう。このときは北沢峠に戻る必要があったので藪沢カールを半周するような流れで仙丈小屋へ向かいますが、縦走路はさらに大仙丈ヶ岳方面にも伸びています。この写真は大仙丈ヶ岳方面を撮った写真で、左側の斜面が三つ目の大仙丈沢カール。

大仙丈ヶ岳方面

ここから昼食を含め50分ほど休憩。だんだん山頂が混み始め、さらに北西から馬鹿でかい雲の塊が仙丈ヶ岳に向けて流れてきておりいずれすっぽりと覆われてしまいそうだったので急いで撤収です。下山開始直後すぐにこの状態。

突然

本当にこれだから山の天気は読めません。山頂を振り仰ぐと雲に覆われたり姿を現したりを繰り返していました。

振り仰げば山頂

この先太陽は雲に覆われ、曇天の中の下山となりました。いずれにせよ樹林帯に入り展望などは特になかったので、I氏初投入の一眼レフで花を試し撮りしまくります。

カメラ小僧
カメラ小僧。

仙丈ヶ岳の花々

  • 右上…火打山でも見たマルバダケブキと思われる。
  • 右下…巻機山妙高山でも見かけたミヤマアキノキリンソウの咲きかけ?
  • 左下…こちらも巻機山でも見たハクサンフウロ。
  • 左上…こちらはトリカブト。危険な植物が普通に咲いているあたりおそろしい。

さて、写真撮影を楽しみながら下山していたところ、ちょっとしたハプニングが発生。以下の画像の中心の分岐点より、

拡大地図

本来は丸の方向に向かうべきところを、誤ってバツの方向に向かってしまう。地図をよく見れば丸の方向は沢を渡っていないので、沢を渡った時点で間違えたと気づくべきところをそのまま先に進み小屋が見えた時点で間違えたことに気づく。この分岐は間違えたところでそのまま進めば下山できるので問題はありませんが、これが問題のある分岐だったらと、頭の中で反省しながらの下山となりました。数年前の立山を思い出します。ルーファイや地図読みは今よりもできるようにならねばと気を引き締められる一件となりました。

ログ

このときのログ。1,000m以上のアップダウンをよく乗り切った、ちゃんM!

そんなこともありつつ、無事下山。曇天でしたが結果的に雨には降られずに戻ってくることができ、このまま雨は降らず曇天を維持することになります。テントを張っている長衛小屋には八ヶ岳の赤岳鉱泉のように生ビールのサーバーがあります。ちゃんM初登山・初3,000m級祝いに飲まないわけにはいきません。

ビール!ビール!
待ちに待ったこの瞬間。

さっそく乾杯です!その後持ってきたワインもあけ、持ってきたウインナーなどを焼いてつまみにしながら夕方まで宴会です。飲み始めたのが14時だったので夜更かしとはならず、19時か20時くらいに就寝したと記憶しています。人数は3名ですがテントは二つしかありません。もちろんI氏と俺がセットでちゃんMは別テントです。翌日もまた4時台起床です。

南アルプス編・後編に続く→

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