Prefectural Peak Hunting 6: 奥穂高岳(北アルプス縦走・前編)

2016年8月9日~21日にかけて、12泊13日で上高地から日本海(親不知)まで北アルプスの山々を縦走していました。そもそもの発端は、都道府県毎の最高峰を巡る旅の一環で奥穂高岳(長野県・岐阜県の最高峰)と小蓮華山(新潟県の最高峰)をつなげよう、と思ったところからでした。いったいどこから書けばよいのか、なかなか書き始められませんでしたが、初日から最終日までの行程を振り返りつつ写真と共にまとめてみたいと思います。書きたい事が多かったので、内容を;

◇前編(初日~7日目)(このブログ)
後編(8日目~最終日)
装備一覧(番外編)
の3つに分けました。今後挑戦される方の参考?になれば幸いです。

■初日(8/9)■
◇天気◇
晴れ→(前穂高岳登頂以降)曇り→(18:40以降)晴れ
◇行程◇
河童橋(5:38)→天然クーラー(6:27)→岳沢小屋(7:46)→紀美子平(10:14)→前穂高岳(10:46)5分滞在→奥穂高岳(13:19)→穂高岳山荘(13:50)
※コースタイム比: x0.95

沢渡駐車場から上高地へ行く始発のバスに乗り、いざ出発。上高地に到着後はトイレなどを済まし、写真を見て振り返ると5:38時点で合羽橋の前にいます。


上高地、河童橋にて。いよいよ始まると思いワクワクした事を覚えています。


9:14地点。振り返ると上高地があんな下に。

食料がまったく減っていないフル装備のザックはやはり重い!徐々に高度を上げて行き、前穂高岳への基点である紀美子平に10時過ぎにようやく到着。ザックを降ろし空身で初めて前穂高岳に登りました。


紀美子平にて。


前穂高岳山頂にて。

前穂高山頂までは快晴だったのですが、徐々に曇ってきて以降穂高岳山荘に到着するまでずっと曇りでした。奥穂高岳山頂も残念ながら曇りでしたが、今回の旅の目的である都道府県別最高峰の1座を初日に落とせたのは嬉しかったです。


長野と岐阜の県境にあり、両県の最高峰・奥穂高岳。同時に、日本第3位の高峰でもあります。

テント場に着いてゆっくりしていたら、どうも天気が安定せず少しだけ雨が降ったりもしましたが、18:40にようやく雲が消え快晴!奥穂高岳(山頂は見せませんが)と月のコラボレーションは、初日に標高を稼いだことによる疲れを解消してくれました。


奥穂高岳と月のコラボレーションに癒される。

穂高岳山荘にはまさかのUSB充電設備があり、使用料は1回200円!これは使わない手はないということで、充電させてもらいました。非常に設備の整った小屋で心底驚いたのを覚えています。夕焼けで癒された心。初日はこれで終わり、2日目に続いていきます。

■2日目(8/10)■
◇天気◇
終日快晴
◇行程◇
出発(4:40)→涸沢岳(5:00)15分滞在→最低コル(6:15)→北穂高(7:38)→Hピーク(9:43)→南岳(12:02)→中岳(13:24)→大喰岳(14:01)→槍の肩(14:30)
※コースタイム比: x1.00

涸沢岳山頂からご来光を見よう、ということで予定よりも少し早く出てご来光に間に合わせました。この日は終日晴れ。この日のご来光+朝焼けは目に焼きついて、この後の行程を頑張るための原動力になりました。


朝焼けに燃える、この日の目的地・槍ヶ岳。


朝焼けの奥穂高岳、穂高岳山荘、ジャンダルム。


パノラマ写真、本当に最高の景色でした。


写真中央、遠くにポツンと見えるのは富士山。


槍ヶ岳をバックに、贅沢な写真。

この後の涸沢岳~北穂高岳間は、後半の不帰嶮(かえらずのけん)と並び今回の山行の中でも屈指の危険地帯でした。とにかくザックが重いのでバランスをとるのが難しく、慎重に足を運んで鎖場を突破していきました。前回来たときはガスっていて何も見えなかった北穂高岳も、この日は快晴!空気が澄んでいて実に気持ち良かったです。


踏むのは2回目、北穂高岳山頂。


振り返れば奥穂高に前穂高。

ここから先は、前年たどったルートを逆走するだけなので気持ち的には楽でした。前回は見過ごしていた長谷川ピークも今回はちゃんと確認。大キレットをすばやく突破し「あとは確か楽だったな~」なんて楽観視していたのですが、南岳~中岳間のアップダウンが結構強烈で楽観視していた分精神的に堪えました。やはりどのルートも全力で挑まないと駄目ですね。


今回は確認、H(長谷川)ピーク


昨年に引き続き2度目の南岳山頂。奥には常念岳。


振り返れば辿ってきた道が。南岳小屋もばっちり。


ここも2度目の中岳、ここに至るまでにかなりのエネルギーを消費しました。


昨年はスルーした3,000m峰・大喰岳。分かりづらいピークでしたが今回は踏んできました。

14:30までに到着しないとテント場が埋まってしまうかもよ!と、別の方に声をかけて頂いていたので、目標を14:30到着に設定し先を急ぎました。無事目標の時間に到着し、テント場も確保。一休みしていたところ、ちょっとしたハプニングが。記憶ではズボンのポケットに入れていたiPhoneの充電ケーブルが見当たらない!!北海道山行時はアイゼンの袋を落とすし、またか!と1人テント内で焦る。片っ端から探してもどうしても見つからず、「これは困ったぞ」とかなり落ち込みました。以降のバッテリー計画を練り直して、テントの中で一人ふさぎこみながら寝袋に入ったところ…

「ん、これは…!?」

なぜかiPhoneのケーブルが寝袋の中に!!これは本当になぜその位置にあったのかさっぱり分からず、個人的には落とした場所から寝袋の中にワープしてきたとしか思えませんでした(実際はおそらく前夜寝ている最中にポケットから落ちたのでは)。見えない力に本気で感謝。ホッと一息つき、次の日に備えて就寝。基本的に毎日20時の就寝を心がけていました。

■3日目(8/11)■
◇天気◇
終日快晴
◇行程◇
出発(5:22)→樅沢岳(8:32)→双六岳(10:18)→三俣蓮華岳(11:37)10分滞在→三俣山荘(12:40)
※コースタイム比: x0.95

3日目以降はいよいよ行ったことのない山域に入るので気合が入りました。歩いてみたかった西鎌尾根は歩き甲斐がありそうで、朝からワクワクしていました。


今から歩く、西鎌尾根。最初はかなり高度を落とします。

樅沢岳を通過し、双六小屋で仲良くなった人と盛り上がり少し休憩して双六岳へ。双六小屋から双六岳へのアプローチは今回の13日の中でも指折りの急登で、特に最初の分岐までの20分間がきつかったのを覚えています。


展望良し!双六岳山頂。

その後順調に先へ進み、三俣蓮華岳へ。振り返れば歩いてきた西鎌尾根がバーン!と見え、さらにいずれ挑戦してみたい北鎌尾根もばっちりと捉えることができ、最高の眺めの中少し山頂でゆっくりしました。


三俣蓮華岳山頂にて。振り返れば西鎌尾根。

この日はコースタイムに余裕があったので途中いろんな人と話したり休憩したりしながらゆっくり進み、ほぼコースタイムどおりの時間に山荘に到着。テント場を確保しゆっくりしていたところ人がどんどんやってきて、なんだ?と思っていたらこの日は「山の日」だったのでした。他の人から聞いたところによると槍ヶ岳のテント場は朝10:30にすでに埋まったということで、「いったいどうやればその時間にたどり着けるのか」と少し不思議に感じたのを覚えています。この日もテント場の人と仲良くなり以降の行程を話したりして盛り上がり、20時就寝。写真を撮り忘れましたが、三俣山荘のテント場から見た鷲羽岳の堂々たる姿が非常に勇ましく、翌日の登高意欲を掻き立てられました。

■4日目(8/12)■
◇天気◇
終日快晴
◇行程◇
出発(4:20)→鷲羽岳(5:22)10分滞在→ワリモ北分岐(6:15)→水晶小屋(6:47)→水晶岳(7:12)→水晶小屋(7:40)10分休憩→野口五郎岳(10:01)10分滞在→烏帽子小屋(12:52)
※コースタイム比: x0.88

4日目。13日間でどの日が一番良かったか、と聞かれたらまずこの日を挙げると思うくらい最高の一日でした。コースタイム的にご来光には間に合わないと思っていたのですが、少し早く起きたので早めに出て早歩きで鷲羽岳へ。見た目どおり実に楽しく登れる山で、見てよし登ってよしの最高の山だ!なんて思いながら登っていましたが、結果的に景色も良しという一分の隙もない山でした。山頂に至る前にご来光の瞬間が訪れましたが、山頂に至った時点でもまだまだ朝焼けで忘れられない景色に息を呑みました。


鷲羽岳山頂にて。空を横切るのは飛行機雲。


字体がかわいい看板。


パノラマ写真、今回の山行でもっとも気に入っている写真です。

朝から最高の気分にさせてくれた鷲羽岳。思い出深い、大好きな山となりました。気分が乗ったからかこの日は歩みが速く、ピストンする予定だった水晶岳にあっという間に到着。ここの山頂もまた、奥穂高岳~西鎌尾根~鷲羽岳、と、歩いてきた道がバン!と目の前に広がって非常に感慨深い場所でした。


水晶岳山頂にて。歩いてきた道がバン!と。


パノラマ写真、朝焼けではなく昼間の青空もまた良い。

この後も順調に進み、気持ち良い稜線歩きの中、野口五郎岳に到達しました。


水晶小屋以降の道、なかなかに険しい道でした。


野口五郎岳へと続く道、最終アプローチは結構きつかった!


山頂にて、水晶岳も含む歩いてきた道が見えてここもまた最高でした。(この写真に水晶岳は写っていませんが・・・。)

野口五郎岳から烏帽子小屋への道程は、最初はよかったものの最後に烏帽子小屋へ急激に高度を下げる箇所で足がヒーヒー。しかもテント場を通り過ぎてから小屋まで結構登るので、野口五郎岳以降日を遮るものがなく暑かったこともあり最後のほうはバテバテでした。そしてここのテント場、標高が低いからか到着した時間が早かったからか(もしくはその両方か)酷暑!他の人は日傘など持って来ていましたが、そんなもの持って来ているはずもない俺は小屋へ避難。小屋には翌日の目的地である船窪小屋から来たという3人組(それぞれ単独行)がおり、俺も輪に入れてもらいワイワイと3~4時間楽しく話しました。お互い名乗ることもありませんでしが、楽しい時間をありがとうございました!ちなみに、そのうちの1人は北鎌尾根を登った際GoProで撮った動画をYouTubeにあげているということでしたので、調べてみたところおそらくこの人でした:

こうして楽しい4日目が終わり、反対に「最も厳しかった1日」に数えられる翌日に続いていきます。※余談ですがここの小屋で爪切りを借りました。すっかり持っていくのを忘れており・・・助かりました。

■5日目(8/13)■
◇天気◇
曇り→(不動岳に至る途中より)晴れ
◇行程◇
出発(5:00)→烏帽子岳(5:34)→不動岳(7:56)5分休憩→船窪岳第二ピーク(10:09)→事件発生、停滞→船窪岳(11:54)→船窪小屋(時間未記録)
※コースタイム比: 停滞により不明

5日目は朝から曇り、というよりガス。予報ではまだ晴れのはずなので後に晴れるだろう!と信じて歩みを進めていきました。山頂ではガスってさっぱり何も見えなかった烏帽子岳を通過し、不動岳に至った時点でようやく晴れてきました。


まさに烏帽子のような形状の烏帽子岳。


不動岳から望む、歩いてきた道。写真中心を横に走る稜線の左のほうに烏帽子岳が見えています。
さらに奥に見える稜線は水晶~赤牛かな?

不動岳ではウサギのような動物が横切り、写真を撮る間もなく去っていきましたがあれはウサギだったのだろうか?

さて、晴れたのはいいものの、烏帽子小屋~船窪小屋ルートはアップダウンが非常に激しくさらに標高が低いこともあり、展望のない中汗だくで虫と格闘しながらの行程はもはや「修行」でした。そして船窪岳第二ピークを過ぎたところで事件が。俺の前を歩いていた(らしい)S大学ワンゲル部5人組のうち、1名が掴んでいたルート上のロープがちぎれて滑落。直接その現場は見ていないのですが、歩いていたら彼らに追いつき騒然となっている現場に直面。事情を聞くとそういうことになっているということで、幸いなことに滑落した方に怪我はまったくなく、なんらかの方法で落ちた場所から登り返せば小屋まで辿り着けそうということでした。追い越していくのもなんなので事の行く末を見守っていたところ、彼らが呼んだ小屋の人がロープを持って駆けつけてきました。これでなんとかなるね、なんてホッとしていたのですが、駆けつけたおっさんが開口一番;

「こんな所でロープに頼るからこうなるんだ!」

なんて言い出すので、「(そりゃないだろう!)」と心の中で反論しつつ、「関係ない人はロープなしで通過して」と言われたので俺はその場を通過。九死に一生を得た若者にあの一言はひどいな~、と、今でも思いますが、まあ確かにロープに頼るようなところでもなかったので一理あるかな、とも思います(でも言い方ってありますよねぇ?)。

そんなこんなで汗だくの中船窪小屋にたどり着き、「命がけの水場」に水を汲みに行ったついでに顔と頭を洗ったのはいい思い出です。命がけの水場は冗談抜きで本当に凄まじい場所にある水場でしたが(片手では行けない)、雪解け水のような冷たさであれは本当に気持ち良かった!!テント場で仲良くなったおじさんにサンドイッチを恵んでもらい、夜まで休息。この日で持ってきていた小説「夜の国のクーパー」を読み終わってしまい軽く途方にくれたのも、今となってはいい思い出です。

■6日目(8/14)■
◇天気◇
終日快晴
◇行程◇
出発(5:00)→北葛岳(7:09)→蓮華岳(9:11)→針ノ木小屋(10:20)
※コースタイム比: x0.92

6日目。非常に短い行程ですが、この日もまた楽しく歩けた一日でした。行程上「蓮華の大下り」を逆に登ったのですが、この山がまた岩々していて、前日のおじさんが「プチ穂高」と称していたとおり実に登り甲斐のある山でした。気分よく登っていったらガスが出てきそうな雰囲気になったので(結果的に出ませんでしたが)、景色のいいうちに山頂に!ということで早足に。あっという間に着いた山頂から見た景色は素晴らしいの一言!槍ヶ岳、西鎌尾根、水晶岳、野口五郎岳、烏帽子岳、船窪小屋、そして小屋から蓮華岳までの道・・・ここ数日間の道が目の前に広がっており、息を呑んでその景色をボーっと眺めていました。また行きたい山の一つです。


蓮華岳山頂にて。絶景。この時の感動は今でも覚えています。

ここからこの日の目的地である針ノ木小屋はすぐ近くで、山頂で会った人に「種池山荘まで行けるのでは?」なんて言われて相当悩んだ挙句、初志貫徹!ということでこの日は午前中で行程を終えることにしました。針ノ木小屋はテント場が最高のロケーションにあり、テントの入り口を開けて見た風景はどんなホテルから見る風景よりも素晴らしいと今でも思います。


「天空の窓」と勝手に命名。

この窓から足を出して寝ていたら左足の人差し指をアブに刺されたのは内緒です。ここでもテント場のおじさんと仲良くなり、ワイワイ話しているうちに夜になり就寝。好天が続いたのはこの日までで、翌日以降は天気との戦いが始まります。

■7日目(8/15)■
◇天気◇
曇り→(11:30から)雨→(夜)快晴
◇行程◇
出発(4:00)→針ノ木岳(4:59)→スバリ岳(5:54)→赤沢岳(7:17)→鳴沢岳(8:03)→新越山荘(8:40)→岩小屋沢岳(9:17)→種池山荘(10:24)→爺ヶ岳南峰(11:05)→爺ヶ岳中峰(11:22)→冷池山荘(12:24)
※コースタイム比: x0.85

7日目。この日は朝から天気が悪く、今にも雨が降りそうでした。行程が長い日だったので、いち早く目的地の冷池山荘に着くべく朝4時出発。猛ダッシュで縦走路を駆け抜けましたが、爺ヶ岳中腹で強い雨に降られてしまいました。おかげで雨合羽とザックカバーがぐっしょり。到着後少し悩んだ末、今回の山行初の小屋泊まりをすることに決めました。到着してからも外の天気が良くなる兆しがなかったのもありますが、翌日以降の行程を考えて乾燥室で雨合羽とザックカバーを乾かしたかったというのもあります。悪天候で写真を撮っているような雰囲気ではなったのですが、新越山荘を越えたあたりで突然猿が現れたときは心臓が止まるかと思うほど驚き、その時はすかさずカメラを出しました。


これが新越山荘を越えたあたりで見かけた猿。写真には1匹しか写っていませんが2匹いました。小熊かと思い本気でビビりました。


ようやく見えてきた冷池山荘!この時点でぐっしょりです。

冷池山荘は非常に立派な建物で、テレビも常時付いておりオリンピック開催中というのをこの日久しぶりに思い出しました。泊まった部屋には他にも2名男性がおりましたが、実にラッキーなことに布団が1人1枚な上に誰もイビキをかかない!おかげでグッスリ寝られました。この部屋で一緒になった男性1名とは、この後2日間行程がかぶることになります。

山荘の本棚にあった「神々の山嶺」を久々に少しかじり読みし、夕食は自炊して前日までと同じく20時就寝。天候は16時くらいから安定し、夜の時点では星が見えていたので翌日に期待できました。

後編に続く→

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